4月17日深夜、豊後水道を震源に起きた地震で屋根瓦が落下した、高知県宿毛市の建物。地震は時間と場所を選ばない
この記事の写真をすべて見る

 今年、震度5弱以上の地震が多く観測されている。なぜ、大きな揺れが相次いでいるのか。最近の地震にはどんな特徴があるのか。AERA 2024年5月20日号より。

【2024年1~4月、日本・台湾で起きた震度5弱以上の地震はこちら!】

*  *  *

 かつて体験したことのない激しい横揺れが10秒近く続いた。

「立っているのがやっとで、すごい怖かったです」

 高知県宿毛(すくも)市に住む女性(25)は地震の恐怖を語る。

 4月17日午後11時14分ごろ、西日本の広い範囲を突然の揺れが襲った。愛媛県と大分県に挟まれた豊後水道を震源に、地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.6、愛媛県愛南町(あいなんちょう)と宿毛市は最大震度6弱を観測した。女性はちょうど風呂から上がったところだった。揺れでクローゼットの扉が開き、中から掃除機や布団が飛び出した。怖くて、その日は車中泊をしたという。

「ついに、南海トラフ(巨大地震)がきたと思いました」

直下型と海溝型の二つ

 南海トラフ巨大地震は、静岡県の駿河湾から九州東沖にかけて延びる南海トラフを震源域とする地震だ。30年以内に70~80%の確率で発生し、想定されるMは8~9級、最大震度は7。「次の大地震」として懸念され、豊後水道はその想定震源域に当たる。そのため今回の地震で女性のように、多くの人の脳裏を南海トラフ巨大地震がよぎった。

 だが、地震のメカニズムに詳しい東北大学の遠田(とおだ)晋次教授(地震地質学)は、両者は「直接関係はない」と言う。

「豊後水道を震源に起きた地震は、フィリピン海プレートの内部で起きた直下型地震。プレート境界で起きる南海トラフ巨大地震とは直接関係ありません」

 しかし、気になるデータがある。震度7を観測した元日の能登半島地震をはじめ、今年になって震度5弱以上の地震は豊後水道の地震を含め23回。昨年1年間の8回を大きく上回る。4月3日には、台湾東部の花蓮県(かれんけん)を最大震度6強の地震が襲った。

 日本列島は、海側の太平洋プレートとフィリピン海プレート、陸側の北米プレートとユーラシアプレートの4枚のプレート(岩板)が接する境界付近に位置する。地震は、海側のプレートと陸側のプレートがせめぎ合い、ひずみがたまると発生する「海溝型地震」と、プレート内の断層面がズレて起きる「直下型地震」──主にこの二つに分けられる。

次のページ