セ・リーグの球団が清宮をチェック
育成に主眼を置いていた新庄監督の起用法が、実力主義に変わってきたことで厳しい状況に置かれた選手も出てきている。守備難の野村佑希は開幕から「5番・三塁」でスタメン起用されていたが、8試合出場で打率.077と結果を残せず4月12日に登録抹消。自主トレ期間中に左足関節捻挫で出遅れた清宮幸太郎は4月19日に1軍昇格したが、9試合出場で打率.083、0本塁打。一塁、三塁、左翼と様々なポジションを守っている。
清宮は守備能力が決して低いわけではない。昨季は三塁に固定されるとボールさばきにミスが少なく、送球も安定していた。ただ、試合中の状況判断でミスが目立つ場面が時折あった。20本以上の本塁打を打つ能力があるなら我慢して起用してもらえるが、昨季は打率.244、10本塁打。今年は一塁がマルティネス、三塁は郡司がレギュラー格のため、ベンチを温める機会が多い。
ドラフトで7球団が競合し、鳴り物入りで入団した清宮もプロ7年目。故障がちで、規定打席に達したシーズンは2022年のみだ。前出の記者は、「将来の主力として期待されたが、伸び悩みの感は否めない」と指摘し、こう続ける。
「今年1軍に定着できないようだったら、選手が輝く環境を模索するためにもトレードの可能性がゼロとは言えません。同じドラフト1位の吉田輝星も昨オフにオリックスにトレード移籍しましたしね。実際にセ・リーグの複数球団が清宮をチェックしています」
中村奨は広島を離れたほうがいい?
トレードで言えば、さらに現実度が高いのが中村奨成(広島)だ。地元・広島市出身で、広陵高に進学した3年夏の甲子園では1大会個人最多の6本塁打をマーク。ドラフト1位で広島に入団して将来の中心選手として期待されたが、プロ7年目の現在も1軍に定着できていない。今年は3月31日に1軍昇格したが、スタメン起用された4月4日のヤクルト戦(マツダ)で3打数無安打に終わるなど3試合出場で無安打と結果を残せず、1週間あまりでファームに降格した。
広島を取材する記者は中村奨の現状についてこう語る。
「持ち味の打力を生かして三塁や外野で起用され、ファームでは結果を残していますが、1軍で力を発揮できないシーズンが続いています。伸び悩んでいる原因は技術面だけでないように感じます。先輩たちに野球に取り組む姿勢の甘さを指摘されたように、精神面で意識を高く持たないと1軍では通用しない。西川龍馬がオリックスにFA移籍し、外野の1枠が空いた今年はレギュラー奪取のチャンスでしたが、宇草孔基が復活し、田村俊介、二俣翔一、久保修と若手が次々に台頭している。ファームに末包昇大が控えていますし、中村の存在感が薄くなっている。地元の広島は居心地がいいので、他球団に移籍した方が本人にとって良いように感じます」
打撃センスは光るモノがある。4月30日のウエスタンリーグ・ソフトバンク戦では同点の9回に左翼席へ運ぶ決勝アーチ。他球団の編成担当は「高いコンタクト能力と長打力を兼ね備えている。DeNAから現役ドラフトで中日に移籍してブレークした細川成也のように、きっかけをつかめば1軍で十分に活躍できると思いますよ。貧打で苦しむ球団は欲しい選手ではないでしょうか」と高い評価を口にする。