背水の陣の森敬斗
背水の陣を迎えている「ドラ1」がもう一人いる。プロ5年目の森敬斗(DeNA)だ。走攻守3拍子揃った遊撃手だが、潜在能力の高さを生かしきれていない。昨季は開幕スタメンを勝ち取ったが、打撃不振で6月末にファーム降格。8月に右有鉤骨摘出手術を受けた影響もあり、9試合出場のみに終わった。自ら「ラストチャンス」と語っていた今年も開幕からファーム暮らし。昨年のドラフト4位のルーキー、石上泰輝が遊撃を守っている。
「石上はまだまだ攻守で発展途上だが、一本立ちするようだと森の立場がさらに厳しくなる。DeNAは今永昇太(カブス)、バウアーが抜けて、平良拳太郎も右肩の違和感で戦列を離れている。先発陣の層が厚いとは言えない状況で、トレードで即戦力の投手の獲得に動くことは考えられます。森は他球団の編成の評価が高いので、交換要員として要求される可能性がある」(パ・リーグ球団の編成関係者)
貧打で苦しむ巨人にも、ファームで他球団の評価が高い選手がいる。プロ6年目の増田陸だ。高卒ドラフト2位で入団し、育成契約も経験したが22年に再び支配下昇格し、69試合出場で打率.250、5本塁打をマーク。佐々木朗希(ロッテ)の161キロ直球を右中間に運ぶ先制適時二塁打を放つなど思い切りよい打撃で、一時は中田翔(中日)を押しのける形で一塁のスタメンで出場していた。さらなる飛躍が期待されたが、昨年は7月にファームの試合で左肘を負傷して長期離脱するなど1軍出場なし。今年も開幕からファームでプレーしている。
ある在京球団のコーチは「彼はタイミングの取り方が天才的。直球に差されないし、変化球にも対応能力が高い。打撃のシルエットで言えば鈴木誠也(カブス)と重なります。1軍で常時起用すればある程度結果を残すと思いますよ」と太鼓判を押す。巨人の外野陣は変革期を迎え、萩尾匡也、佐々木俊輔ら若手が台頭している。増田陸もこの争いに割って入りたい。
トレードは決してマイナスではない。昨年6月に中日と日本ハムの間で成立した郡司、山本拓実と宇佐見真吾、斎藤綱記の2対2のトレードは選手、球団が共にプラスとなったトレードの好例と言える。望まれた環境でプレーして素質を開花させた選手は過去に何人もいる。
トレード期限の7月末まであと3カ月。各球団のウィークポイントが明確になってきた中、トレード補強に要注目だ。
(今川秀悟)