体育や音楽の授業は1人で学年全体をみることもあった(写真はイメージです/gettyimages)

学年全体を1人で

 大分県は、教員不足が深刻と指摘される自治体のひとつだ。

 冒頭の内藤さんの勤務校の場合、理科や音楽などの専科教員まで学級担任にまわさざるを得なくなり、担任には授業をしない「空きコマ」がなくなった。

「空きコマは単なる休憩ではありません。テストの採点や授業準備、教材研究などに充てる貴重な時間です。空きコマがないと、朝8時から夕方4時までぶっ通しで子どもたちと向き合い疲れ切った後で、それをすることになる」

 やるべき業務はまだまだある。学級通信作り、生徒指導、保護者対応、学年会議への出席……。

「体育や音楽の授業は1学年全体を教員1人で見ないと乗り切れないような日が多々ありました。3学期になる頃には、どの教員も疲弊しきっていました」

 たとえ教員が足りなくとも、子どもたちに不利益が生じないように、保護者対応の質が下がらないように。そう頑張るほど、仕事に余裕はなくなった。

「教員は疲弊していくだけでした。完璧な準備ができて日々の授業に臨めていた教員なんて、いなかったと思います。仕事への達成感は得づらく、常に不全感を抱えながら仕事をしなければならない。これが、教員が心を病む一番の原因だと思います」

臨時講師の「人材バンク」が枯渇

 文科省が2022年に公表した教員不足に関する実態調査によると、最大の要因は「産休・育休取得者数が見込みより多かったこと」だという。

 各自治体は、団塊世代の退職を見据え、若手の採用を大きく増やした。結果、産休・育休取得者が増加したという図式だ。

 従来、教員の定数に欠員が生じそうな場合、教委や学校は臨時講師を雇用してきた。だが、最近、その臨時講師の獲得が著しく困難になっているのだ。

 内藤さんが教員免許を取得した30年ほど前、大分県の公立小教員採用数は40人ほどだった。倍率も10倍を超えていた。内藤さん自身、正規教員として採用されるまでに、10年近く臨時講師を務めた。

 だが、最近の状況は様変わりした。昨年度の同県の公立小教員採用試験の予定者数は200人。それに対して受験者数は198人と、すでに定員割れの状態なのだ。そして合格者数は159人と、採用予定者数を大きく下回った。

 つまり、教員志望者も、教員免許を持ちながら正規教員の採用を待つ人も減った。そのため、臨時講師の「人材バンク」だった、県教委の教育事務所に登録する人も激減した。

 では、いまどのように臨時講師を探しているのか。

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