衆院東京15区補欠選挙で候補者の応援演説する日本維新の会の馬場伸幸代表(4月)
衆院東京15区補欠選挙で候補者の応援演説する日本維新の会の馬場伸幸代表(4月)

 もう一つ、大きな地殻変動がある。維新人気が急降下していることだ。

 長崎3区では、立憲と日本維新の会の一騎打ちで維新が完敗した。

 都市型選挙の東京15区でも、維新候補は立憲候補に大差をつけられた上に、完全無所属候補にまで敗れた。政治資金改革が主要テーマだったのに、「改革政党維新」という宣伝文句が全く通用しなかったのだ。

 今回の選挙で、維新は立憲を叩く戦略をとったが、これにより、有権者に自民に近いとみられて失速した。維新の馬場伸幸代表はいまだに立憲叩きを続けている。もはや、「自民に近い維新」というイメージを拭い去るのは難しい。これを立憲がうまく利用すれば、特に都市部では、維新と戦っても勝てる選挙区が増えるだろう。

 さらに、連合とその支援を受ける国民民主党の力もかなり落ちている。   

 長崎と島根では国民が立憲候補を応援したが、共産党が自前候補を立てずに立憲候補を支援した効果の方が大きかったと見るべきだ。

 東京で都民ファーストの会と組んで立憲候補に大敗したことも、国民の力が非常に弱くなったことを明示した。国民の自民補完勢力というイメージが強まった結果であろう。

 連合の芳野友子会長もまた自民に擦り寄っていたが、今後は、その連合が味方につくことで、自民寄りと見られる効果のマイナスが大きくなるはずだ。

 次の総選挙では、「共産党と組む立憲は共産主義勢力だ!」という自民、維新、国民などからの批判を立憲が過度に恐れる必要はなくなった。

 以上のとおり、さまざまな観点から見て、これまでの政治の常識、というより政治部記者の常識が通用しない大きな地殻変動が起きている。

 それを明確に認識した上で、当面の国会について、何が最も重要かを考えてみたい。

 冒頭で紹介したとおり、大手メディアの政治部記者たちは、終盤国会の焦点は、規正法改正を「今国会中に実現できるかどうか」だと報じている。

 しかし、これは、規正法改正実現で裏金問題を収束させ、その後は、6月からの定額減税実施や春闘の結果を反映した賃金上昇などを材料として支持率アップを狙う岸田首相のシナリオに乗った報道に過ぎない。

 そもそも、自民党政治の問題の本質は何かというと、補助金、減税、公共事業の配分などを期待する企業・団体・富裕層に、政治献金やパーティー券購入で自民党に資金を提供させ、その資金を使って選挙を戦い権力を維持するという金権体質にある。

 1件ごとの献金と利益供与が結びつけば「贈収賄罪」だが、阿吽の呼吸で特定の結びつきを見せないため、実際には野放し状態である。こうした仕組みの中で、政治家は裏金を作り、選挙で広い意味での買収が行われてきた。今回の裏金問題は、それを見事に暴露したわけだ。

 この構造はかねて問題視され、1994年成立の政党助成法や99年改正の規正法では、公費による政党助成金導入の代わりに企業献金を廃止することを大きな目標として設定していたが、実際には企業献金は残し、政党は国民の税金による政党助成金を受け取るという「二重取り」の制度となってしまった。

 こうした経緯と問題の本質を正しく理解すれば、これから行われる政治資金改革においては、「企業団体献金」を全面禁止することが最重要だということがわかる。

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