鈴木おさむさんの小説『もう明日が待っている』とエッセイ『最後のテレビ論』が同時刊行された。放送作家を引退した鈴木さんが物語として書き残したかったこととは。AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より。
* * *
──鈴木さんの新刊『もう明日が待っている』と『最後のテレビ論』(ともに文藝春秋)ですが、この2冊、どちらからも思いを一気に書き抜かれた印象を受けました。
鈴木おさむ(以下、鈴木):『もう明日が待っている』は、最初は「文藝春秋」の創刊100周年にあたる2023年の1月号に小説を書いてほしいと新谷学編集長に依頼されたところから始まったんです。迷いましたけど、SMAPの解散について、暴露的だと思われるかもしれないけど、ずっと彼らを見てきた自分にしか書けない物語があると思ったとき、自分がこれを書くことによって誰かが多少なりとも救われる物語、一滴の希望を持つ物語を書けないかなってところからスタートしました。
SMAPは“戦友”
そして、自分が放送作家を辞めると決めたとき、最後にSMAPのこと、テレビのことをやっぱり書くべきじゃないかと思ったんです。90年代の男性アイドル冬の時代にデビューしたSMAPでしたけど、彼らがブレイクしたことによって間違いなくテレビって大きく変わったんです。
なおかつ、今、芸能界自体が大きな変革の時期になってきている。その中で2016年のSMAP解散を小説のゴールとするならば、テレビの裏側も含めて、マネージメントの力、そしてスタッフの力も含めて、それを物語で書き残したいと思ったんです。
──僕は、どちらにも“青春”を感じたんです。テレビの中にある青春。
鈴木:やっぱり何が描きたかったかというと、“青春”。それも大人になってからの“青春”。青春って、儚くて残酷じゃないですか。「SMAP×SMAP」(以下、「スマスマ」)の最終回まであと何回かというタイミングで、椎名林檎さんがゲストで来て「青春の瞬き」をメンバーと一緒に歌ったんですよ。その頃は、解散を控えて収録中の雰囲気もすごくよくなかった。でも、そこにあの曲がすごくハマった。あの謝罪放送まで含めて、それが青春なんだなと僕は思ってます。