コミュニケーションを取らなければ、プロデューサーの役割である「交通整理」はできない、とも指摘する。

「プロデューサーが原作者としっかり意思疎通を図り、信頼関係を築くことが大切だと思います」(西脇弁護士)

 元テレビ東京プロデューサーで『混沌時代の新・テレビ論』の著書もある、桜美林大学芸術文化学群の田淵俊彦教授は、ドラマ化に際して原作が改変される一番の原因は「テレビ局側と出版社側とのコミュニケーション不足にある」と指摘し、背景に(1)人材不足、(2)リテラシー(情報を扱う能力)不足──この「二つの不足」があると見る。

現場の人材不足深刻

「いまだテレビ局の番組制作現場は『ブラック』というイメージがあり、現場を志す若者がますます少なくなっています。またテレビ局は番組のつくり手をないがしろにしてきた結果、30代、40代の優秀なクリエイターの人材流出も起き、現場の人材不足は深刻です」

 その人材の薄さが、リテラシー不足に関連しているという。リテラシーを磨くには「想像力」と「リスクマネジメント能力」が必要だが、今のテレビ業界はともに欠如している、と。

 例えば、制作者側が「脚本家がこう言っているが、原作者に伝えると怒るから言うのをやめよう」と思ったとしても、「伝えなければ問題が生じる」と想像し、リスクを避け「やはり言わなければ」と考えて伝える──。

「このように、想像力と同時にリスクマネジメントを働かせるリテラシーを持っているのが本来のメディア人です。しかし、想像力とリスクマネジメント能力が不足していることで、結果としてコミュニケーション不足につながってしまっています」(田淵教授)

「原作軽視」ではない

 コミュニケーションの齟齬は、どこで生じるのか。

 田淵教授はこう考える。

「テレビ局で著作権の交渉をおこなうのは、プロデューサーです。プロデューサーは、漫画をドラマ化すると決まれば、原作の著作権を預かっている出版社の著作権部にまず連絡を取ります。すると著作権部が、漫画家や作家と向き合っている編集者に話をし、編集者が漫画家や作家と連絡を取るようになります」

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