味気ない文章に、単調なデザイン。かつては「勉強のために仕方なく読むもの」というイメージが強かった参考書も、今は音声や動画付き、カラフルでイラスト入りなど、さまざまなものが出版されています。講談社の漫画配信サイト「コミックDAYS」で連載中の『ガクサン』(講談社)は、その名の通り小学生から中高生向けのガクサン=学習参考書を題材にした作品です。作者の佐原実波(さはら・みは)さんに、連載開始の経緯と作品に込めた思いを聞きました。※後編<「参考書は実物を見て買って」 500冊以上の学習参考書を読破した、漫画『ガクサン』作者が力説するワケ>へ続く
【マンガ】『ガクサン』(講談社)を読む(全40枚)登場人物は新入社員と「参考書オタク」
――学習参考書は「ガクサン」と呼ばれているんですね。
聞き慣れない言葉ですよね。私も全然知らなかったんですが、出版社や書店などでは当たり前に使われている言葉だそうです。
――作品のテーマに学習参考書を選んだ経緯を教えてください。
「学習参考書を題材にした漫画」というのは、担当の編集者さんのアイディアです。これまでの漫画では見たことのないテーマでしたが、だからこそ世の中に出したほうがいいと感じましたし、私自身、漫画家になる前に編集者として働いた経験があったので、出版社を舞台にした作品を描けば、当時の経験が役立つかもしれないとも思いました。
――『ガクサン』は、出版社の「お客様ご相談係」に配属された主人公の茅野うるしと“参考書オタク”の元編集者・福山譲が、勉強に関するさまざまな相談事を学習参考書を使って解決していく物語です。作中で紹介されるのはどれも実際に販売されている学習参考書ですが、佐原さんは毎回すべてに目を通しているのでしょうか?
そうですね。作品に登場させないものも含めて、1話につき平均5冊は読んでいます。現時点で130話くらいまで連載が進んでいるので……500冊以上は読んでいるんじゃないでしょうか。資料として使った参考書は今、1部屋に集めて平置きにしているのですが、かなりの高さに積み上がっています(笑)。
たくさん読んでみて感じたのは、今どきの学習参考書は、とにかく学習者のあらゆるニーズに対応しているということ。ここまできめ細やかな工夫をこらして参考書を作っている国は、他にないと思います。日本の出版文化の豊かさの表れですね。
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