他の国のことはよくわからないが、近年のあれこれあれこれあれこれを鑑みるに、日本は嘘にとても寛容な国なのではないか……と考えずにはいられない。真実を知るよりも、痛みの少ない嘘を守るほうに荷担しやすく、「自分を守るため」「組織を守るための嘘」にはふんわりとゆるい。真実解明よりも、「今が維持されるなら、嘘でもいい」と思っている人のほうが、実は多い社会なのではないか。

 小池百合子都知事がエジプト留学時代に同居していたという80代の女性が、昨年11月、本名を出して「週刊文春&文春オンライン」の動画で証言した。2020年のベストセラー石井妙子著『女帝』に登場し、都知事の学歴が詐称であると仮名で告発した女性だ。彼女によれば、20代の小池氏がメディアに大きく取り上げられるきっかけとなった華やかな経歴「カイロ大学首席卒業」は嘘で、小池氏はそもそもカイロ大学を卒業しておらず、小池氏が世に出るきっかけとなった著書『振り袖、ピラミッドを登る』で紹介されるエピソードには、その女性が体験したものが小池氏のものとして含まれていたという。

 小池氏の学歴詐称問題については、『女帝』が話題になった時に小池氏自身がカイロ大学卒業証書とされるものを公開し、カイロ大学からも小池氏の卒業を認める声明が出された。それで一件落着ということに公式ではなってはいるが、この問題を真剣に深掘りした大手メディアは皆無に等しく、小池氏がカイロ大学を首席卒業したという客観的証拠が十分にあるとは言いがたい状況だ。この女性はこれまでも大手メディアに小池氏の学歴疑惑を告発してきたが、無視され続けたという。「権力者の秘密を知っている恐怖」にさらされてきたと語るその女性は動画のなかで、しっかりとした声でこう話していた。

「日本人はそれをなぜ許すんだろうという気持ちは強く、胸の中に暗い感じでいつもありました」

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嘘を見抜くことは難しい