この場合、彼女が嘘をついているか、小池氏が嘘をついているか、二択しかない状況だが、であれば公人の小池氏に対しては厳しい追及や調査がされるべきなのではないだろうか。支持率が低迷する自民党内部から小池百合子国政待望論が囁かれていたり、もしかしたら女性初の総理になるのではないか、という声があがっていたりする今であれば、なおのことだ。

 正直に言えば、文春でこの女性が新たに告発をしていることを私は最近まで知らなかった。都知事の昔の学歴を今さらいろいろ言っても仕方ない……という諦めが私自身にもどこかにあったのだと思う。それでもやっぱり都知事の学歴詐称疑惑は徹底追及すべきじゃない? と思うのは、オータニさんの相棒であった水原一平氏の学歴詐称疑惑が報道されたからだ。エンゼルスのメディアガイドに水原氏が卒業したと記載されていた「カリフォルニア大学リバーサイド校」が、在籍記録に水原氏の名前がないことを明らかにした。本人にとってはキャリアを重ねるためにした誰も傷つけない小さな嘘が、結局は大きな破滅につながることもある。本人の破滅だけでなく、周りを大きく巻き込む破壊行為につながる。オータニさんの人生に全く関係ない私だが、それでもとてつもなく胸が痛い……。信じていた人に裏切られる痛みの深さはどれほどのものだろう。

 嘘を見抜くことは実はとても難しい。嘘が大きければ大きいほど、嘘が眩しければ眩しいほど、嘘をつく必然性がない人の嘘ほど、嘘を見抜くのは難しい。小池氏のキャリアは真実であり、その人気も、その実力も嘘ではないだろう。それでも、最初の一歩がもし嘘であったのならば……その疑惑を疑惑のまま放置し続けてよいものなのだろうか。

 エイプリルフールで始まる新しい年度。水原氏がついたかもしれない嘘があったからこそ育まれた、美しく見えたオータニさんと水原氏の関係や、小池氏がついたかもしれない嘘があったからこその女性初の東京都知事とか……嘘と社会について考えさせられる始まりである。

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