AXIS Fontのようなユニバーサルなものにせよ、都市フォントのようなテーマ性の強いものにせよ、文字づくりは、スケッチから始まるという。
「頭の中で書体のイメージを膨らませたら、まずは手でスケッチしてみます。手の動きや文字の息吹を残すことを大切にしながら、活字にするために洗練させていくんです。スケッチしたらスキャンしてパソコンに取り込み、それをフォント化してはプリントアウトして、際限なく修正を繰り返していきます」
方向性が定まっても、1日に作れるのは多くて数十字。和文フォントとして発表するには1万字程度が必要になる。線の太さや縦横比を調整したバリエーションもパッケージに含めることが多く、フォントづくりは数年がかりの大プロジェクトだ。
「ゴールは途方もなく遠いけれど、決して苦痛じゃないんです。『今日はいい字が20字つくれたな』って日は晩ごはんがおいしい。飽きない仕事ですよ」
文字を読むときも、自分がフォントを選ぶときも、もっとその書体に気を配ってみよう。でも、鈴木さんは優しそうにほほ笑みながらこう答えてくれた。
「何げなく選んでくれているということは、それが心地よくてストレスがないということ。フォントの作り手としてはそれで大成功ですよ」
(編集部・川口穣)
※AERA 2024年4月8日号