すずき・いさお/1967年、名古屋市生まれ。タイププロジェクト代表。テーマフォントとして都市フォントのほか、「四季フォント」構想を発表。企業専用フォントも多数手掛ける。子どものころは「マンガ少年」だった(撮影/編集部・川口穣)

 AXIS Fontのようなユニバーサルなものにせよ、都市フォントのようなテーマ性の強いものにせよ、文字づくりは、スケッチから始まるという。

「頭の中で書体のイメージを膨らませたら、まずは手でスケッチしてみます。手の動きや文字の息吹を残すことを大切にしながら、活字にするために洗練させていくんです。スケッチしたらスキャンしてパソコンに取り込み、それをフォント化してはプリントアウトして、際限なく修正を繰り返していきます」

 方向性が定まっても、1日に作れるのは多くて数十字。和文フォントとして発表するには1万字程度が必要になる。線の太さや縦横比を調整したバリエーションもパッケージに含めることが多く、フォントづくりは数年がかりの大プロジェクトだ。

「ゴールは途方もなく遠いけれど、決して苦痛じゃないんです。『今日はいい字が20字つくれたな』って日は晩ごはんがおいしい。飽きない仕事ですよ」

 文字を読むときも、自分がフォントを選ぶときも、もっとその書体に気を配ってみよう。でも、鈴木さんは優しそうにほほ笑みながらこう答えてくれた。

「何げなく選んでくれているということは、それが心地よくてストレスがないということ。フォントの作り手としてはそれで大成功ですよ」

(編集部・川口穣)

AERA 2024年4月8日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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