今回のフェスでは太鼓に挑戦。太鼓の魅力は「音につられ、自然と人が集まってくる力」だという。
港ばやしは、1人で二つの小太鼓と大太鼓を演奏する独特の奏法で知られる。佐藤さんによれば、1人で三つの太鼓を扱うのがまず難しく、かつ、大きくしなやかに見せないといけないのでより困難さが増すという。本番に向け、動画を見ながらそれぞれの手の動きや叩いている位置を全てメモに書き起こし、それを見ながら、ひたすら練習した。この日は祖母も会場まで見に来てくれ、練習の成果をいかんなく発揮できたという。
「120%の力を出せました」
「結」の発足は1997年。例年4月の春公演と11月の学園祭などで、全国各地の祭りのお囃子や踊りなど伝統芸能を披露する。全員が「祭り好き」だ。
優雅な所作に衝撃
この日、つづいて演じられたのは、秋田県の北東部に位置する鹿角市(かづのし)に江戸時代中期から伝わる「毛馬内の盆踊」。毎年8月21日から3日間開かれ、秋田県三大盆踊りの一つとして継承され国重要無形民俗文化財にも指定されている。重さ30キロほどもある大太鼓を二人がかりで抱え、その周りを囲むようにして踊りを披露した。
鮮やかな留め袖の衣装を着て優雅に踊ったのは、東京学芸大学2年生の仲野美優さん。横浜育ちで、「子どものころから盆踊りが大好き」。地元の盆踊りでは太鼓を叩き、踊った。
しかし、毛馬内の盆踊を昨年11月の事前交流会で初めて見て、衝撃を受けた。
地元の盆踊りは、カセットテープから流れる音楽にあわせ踊るだけ。しかし、毛馬内の盆踊は、太鼓や笛といった楽器にあわせて踊る。そして何より、優雅な所作──。
「手を上げすぎても上げなさすぎてもよくなくて。踊り演者の方から『角度はこう』と、丁寧に教えてもらい、家では動画を見たりしながら、何度も練習しました」
仲野さんたちが大学に入学した2022年4月は、約3年にわたって続いたコロナ禍もようやく落ち着いてきたころ。だが、コロナ禍でサークル活動は自粛せざるをえなくなり、多くの先輩が辞めていった。しかも、演じることはできても、外であってもマスクをつけなくてはならず演奏中は息苦しさを感じた。マスクをしなくてよくなったのは、1年前の3月から。それだけに学生たちは、今は自由に演じられることが何よりうれしいといい、この日も皆「楽しかった」と声をそろえた。