東京学芸大学の「結」のメンバー。左から、手島彪冴さん、佐藤匠さん、仲野美優さん。「一生の思い出です」と声をそろえた(撮影/編集部・野村昌二)

 伝統芸能を通して地域を盛り上げる「わっかフェス」が3月、秋田を会場に開かれた。東京からは、大学生15人が参加。2千人の観客が沸き、酔いしれた。AERA 2024年4月8日号より。

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 太鼓と笛と鉦(かね)の軽快で賑やかな祭り囃子が、2千人(主催者発表)が入った満員の大ホールに鳴り響いた。

「すごい緊張しましたけど、一生に一度の経験になりました」

 東京学芸大学2年の佐藤匠さんは、ステージを終えると、満面の笑みで話す。

 3月24日。秋田市の「あきた芸術劇場ミルハス」で開かれた「わっかフェス」(主催・三菱商事、朝日新聞社、AAB秋田朝日放送。後援・秋田県など)。郷土や伝統芸能の魅力を発信し地域を盛り上げていくことを目的に、昨年初めて開催された。2回目となる今年も、全国最多17件の国指定重要無形民俗文化財があり「伝統芸能の宝庫」といわれる秋田の地で、しかも同じ会場で開かれた。

1人で太鼓三つを演奏

 今回は「土崎港(つちざきみなと)ばやし」「毛馬内(けまない)の盆踊」「花輪ばやし」そして「なまはげ太鼓」──のいずれも秋田を代表する四つの伝統芸能の担い手たちが参加。そこに、東京学芸大学の和太鼓サークル「結(ゆい)」の学生15人が加わった。

 トップバッターは冒頭の「土崎港ばやし」。このお囃子は、秋田市の北部の港町・土崎地区に400年近く前から伝わり、例年7月20、21日の両日に行われるユネスコの無形文化遺産と国重要無形民俗文化財にも指定された「土崎神明社祭(しんめいしゃさい)」の曳山行事で演奏される。

 先の佐藤さんは東京育ち。幼いころから夏休みになると秋田に住む祖母の家に遊びに行き、そのたびに地域の盆踊りなどに参加したりするうちに祭り好きになった。高校では軽音楽部に入りベースを担当。大学に進学すると、祭りにも参加している「結」を知り、飛び込んだ。昨年11月からは、同サークルの代表を務める。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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