ちなみに、12年に安倍晋三元首相が総裁に選ばれた総裁選では、5人の議員が立候補したが、1回目の投票では、石破氏が党員票165票(55%)だったのに対して安倍氏は87票(29%)と石破茂氏の半分強しか取れなかった。

 しかし、安倍氏と石破氏の決選投票では、国会議員票のおかげで安倍氏が逆転して総裁に選ばれたのだ。党員票を完全に無視した結果だとして当時も問題になった。

 このように、自民党員の意見に反した総裁選びが行われて、その人が半自動的に日本の総理大臣になるということは、大半の国民が最初から支持していない首相が常に日本の政治を取り仕切ることになりかねないということを意味する。

 やはり、自民党総裁選のルールを根本から変えて、一般党員の支持によって総裁が選ばれるものにしていくことが求められるのではないだろうか。

 ルールの変更を具体的にどのように行うかについては、さまざまな考え方があるだろう。

 一番わかりやすいのは、1回目の投票では、党員だけの投票とし、過半数を取る候補がいない場合の上位2人による決選投票でも党員だけで投票するという仕組みに変えることだ。

 そのほかの考え方が、国会議員票の割合を少し減らすだけというものだろう。減らす度合いを高めていけば、党員だけの投票に近づいていくが、あまり減らさなければ現行とあまり変わらない。

 次期自民党総裁選は、一番遅くても今年の9月に行われる。直前にルールを変更するのは困難だろうから、急いで変更を行うべきだ。

 これまで問題とされてきた派閥は総裁選のためにあったという側面もある。また金がかかるのは、総裁選に向けた多数派工作のためとも言われてきた。それらを勘案すれば、総裁選における議員票の割合は、極力小さくして、議員の声を聞くよりも国民(党員)の声を聞くことの方が、総裁選を勝つためには重要だという構造を作ることが必須である。

 再選を狙う岸田首相ポスト岸田の候補だと目される茂木敏充幹事長はいずれも、そのような改革には後ろ向きだと思われる。なぜなら、彼らのライバルである石破氏や河野氏、さらには高市氏や今人気急上昇中の上川陽子外相などの方が岸田氏や茂木氏よりも多くの党員票を獲得できると見込まれるからだ。

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若手議員を巻き込み、総裁選の改革を提言すべき