母はその後、有料老人ホームを経て介護老人保健施設(通称・老健)へ入所した。現在は療養型病院に入院中だ。
父は22年6月から有料老人ホームで暮らしている。面会に行くといつも「ここはどこか」と聞く。私は大げさな表情で「ここはキレイでいいねぇ! お父さまのお部屋、最高!」と笑って返す。(おぉ、そうか。それほどでも)という顔になる父を見て安心する。その繰り返しだ。
施設選びできなかった
私は父と母を穏やかに在宅で看ることができなかった。施設選びも正しくできなかった。グループホームと特養の違いすら知らなかった。何をいつどう選ぶのか。誰も教えてくれなかったし、自分が、何がわからないかもわからなかった。動いてみなければ想像できない。それが介護だと思う。
「事業所・施設選び」を簡単にまとめた。あくまでも私の体験によるものであることを理解した上で見てほしい。
たとえば福祉用具の自費レンタル。父は、有料老人ホームに入居した当初は自立歩行ができていたが、トイレに転倒防止のポールをつけた。車椅子仕様の広いトイレは便器に座った時、正面につかめるものがないからだ。レンタル代(月々7千円ほど)は全額負担となった。理由は、施設入居者は施設内で介護保険適用枠を100%使っているため、介護保険が使えないからだ。週1回の訪問リハビリと、週4回の訪問マッサージ、施設に出入りする訪問歯科医も訪問医も、全部自分の意思で探し、選んだ。訪問日にはホームに足を運び、できるだけ立ち会い、様子を聞く。変化があればすぐに対応策を考える。その距離感は在宅介護とさほど変わらない。
4年前に入所した特養の時は、ここまで介入はできなかった。当時はコロナ禍ということもあり、面会も叶わず、両親が建物の中でどんな生活をしているのか、まったくわからず常に不安だった。特養の相談員からの電話は絶えることなく、「お母さんが全然食事をしなくなりました」と電話が入れば好物の果物を持参し、「寒がっています」と聞けば、厚手の肌着やホカホカ靴下などを持参した。「褥瘡(じょくそう)予防のクッションはどうしますか?」「嘔吐していますが、病院に連れていきますか?」などなど。一番つらかったのは転倒・転落などの事故報告の電話だった。