どうして、安倍政権はあれほど長く続いたのだろうか。小泉純一郎首相の後の日本の首相はいずれも、長く政権を維持することができなかった。小泉が退いたあと、安倍が2012年末に首相に就くまでの期間に、6人の首相がいるが、全員、就任当初は高い支持率を得るが、1年前後で支持率を激減させ、退陣を余儀なくされる。6人全員がほとんど同じパターンである。そして、6人の中には、安倍晋三も含まれている。では、なぜ、二度目の安倍政権は、突然、長続きすることに成功したのか。
二度目の安倍政権は、憲政史上まれにみるほど立派な政権だったからだろうか。評価はさまざまだろうから細かいことはここでは書かないが、安倍政権を褒める人でも、この政権が、憲政史上、最高の成果を挙げたとまでは言わないだろう。それならどうして、「首相はだいたい1年」という状況が定着しつつあった中で、安倍政権だけは長持ちしたのだろうか。
その最大の原因は、安倍政権の直前の「民主党政権」にある。では、「民主党政権」はそんなに悪かったのか。悪く言う人は多いが、しかし、「めちゃくちゃ悪かった」というほどではない。少なくとも、その直前の自民党内閣(安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と引き継がれてきた内閣)と比べて、非常に悪い、というほどではない。
が、まさにそこが問題だったのだ。「民主党」の政権は、特によくはなかった。長く続いた自民党を選挙で倒して、「民主党」は政権を獲得した。これは同じ与党の中での首相の交代とは訳が違う。国民には、大きな期待があった。何か根本的な変化がもたらされるに違いない、と。正直にいえば、どのような変化が生じるのか、その変化はいかにして実現するのか、具体的にイメージできている人はほとんどいなかった。しかし、何かとてつもなく大きな変化が起きるはずだ……日本の国民は2009年の政権交代にそのような幻想をもっていた。しかし、「民主党」には大した策はなかった。「民主党」がもっていた策は「仕分け」くらいのものだった。国家予算を見直し、無駄をなくす作業を続けると、「埋蔵金」が見つかる……そんな幻想を人々は「民主党」とともに抱いていたわけだが、もちろん、埋蔵金など発見されず、仕分けも思ったほどには進まなかった。