「ブギウギ」NHK総合の初回放送は毎週月曜~土曜の8:00から。(C)NHK

 その言葉に触発されたからなのか、最後にトミが「また歌うてくださいね」と言う。愛助も天国で楽しみにしている、自分もあんさんの歌のファンだ。そういうトミの言葉がきっかけで、スズ子は再び歌う決意をする。って、少しきれいにまとまり過ぎでは? と、思ったのは、目の前の人に嫌われる対応ばかりしてきた“ひねくれもの”だからかもしれない。

 そして最後に、「女子の夢」の話をする。ヒロイン応援団が出てくるのは「ブギウギ」だけではない。一番有名なのは「あさが来た」の五代友厚(ディーン・フジオカ)、おディーンさまだろう。だが、彼よりも心に残っているのは、ヒロインに何気なくきっかけを与えた人たちだ。例えば「とと姉ちゃん」の出版社の編集長(山口智充)。「お茶汲みなどしてないで、企画を出しなさい」とヒロインに言う。「カーネーション」のパッチ屋の社長(トミーズ雅)もそう。毎日やって来て、ミシンの作業を眺め続ける女学生(=ヒロイン)に「そんなに見たいなら、入っておいで」と声をかける。

 情熱があるから出会う。そうも言えるだろう。が、情熱はあっても、出会えない。そういう現実を生きる女子が大勢いる。だから朝ドラのヒロインは応援団に囲まれるのではないだろうか。一瞬の夢だから。そんなふうに思うのだ。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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