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 愛助(水上恒司)が元気だった最後の頃だった。スズ子(趣里)が結婚のためなら歌手をやめてもいい、と言い出した。「あかん、あかん」と言った愛助の決め台詞は、「それは芸能界の損失や、ちゃうわ、日本の損失や」

 確かにスズ子は、それだけの人物だ。「スイングの女王」から「ブギの女王」となり、これからは、日本を照らすスズ子が描かれるだろう――とわかってはいる。わかった上であれこれ考えたのが、“スズ子の応援団”のことだ。いい人ばかり、しかもすごくたくさんいる。才能があるから? 人柄がいいから? どっちもなのだろうけれど、それ以上に大きいのが「それは女子の夢だから」ではないだろうか。という話を書いていく。

 愛助の死から3カ月、羽鳥(草彅剛)の家を訪ねてスズ子が新曲を依頼する。「まさか福来君の口から直接リクエストを受けることがあるなんて」と羽鳥が驚いていた。「スズ子は受け身のヒロイン」と、前回書いた。羽鳥との関係もそうで、作る→渡す→歌う。すべてその順序だった。

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 初めての依頼だからか曲作りが難航、羽鳥はスズ子との日々を回想していた。上京直後に「福来君は福来スズ子をつくらなきゃいけないんじゃないかな」と言い、「大空の弟」を歌い終えて泣き崩れたスズ子に「しっかりしなさい」と叱咤し、地方への慰問興行前に「アイレ可愛や」の楽譜を渡し「歌い続けるんだ」と励ました。

 羽鳥はスズ子の才能に惚れ込み、その上で音楽家の先輩としてスズ子を応援している。スズ子の幸福を寿ぎつつ、うらやましさが爆発する。何がうらやましいって、スズ子は羽鳥に偶然、出会えてしまうのだ。東京に来ないかと誘われ、行ったら待っていたのが羽鳥。会社で例えるなら、入社して出会った最初の上司が超大物で、いきなり自分を大応援。これってそんな感じでは、と思う。

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