「ダウン症」という障害を持ち、モデルとして活躍する齊藤菜桜(なお)さん(19)。2021年の記事では、菜桜さんがモデルを始めたきっかけや、母・由美さんが「ダウン症」を受け入れるまでの葛藤の日々などについて取り上げ、大きな反響があった。取材から約3年、どんな変化があったのか。菜桜さんと由美さんに話を聞いた。
【写真5枚】取材中、はじけるような笑顔を見せてくれた菜桜さん
* * *
「ファッションショーに菜桜を目当てに来てくれる人が増えてきました。街で声をかけられることも多くなりましたね」
由美さんは最近の変化をそう話す。
菜桜さんは、2022年に静岡県内の特別支援学校を卒業し、現在は、県内の就労継続支援B型事業所で平日5日、働いている。
菜桜さんに仕事について聞くと、「楽しい!」と答えた。
「モデルもそうですけど、何でも楽しそうにやっていますね」と由美さんは目を細める。
事業所では、菜桜さんの底抜けの明るさが周囲の人たちを和ませているそうだ。
「職員さんが『菜桜さんがいないとみんな寂しがってます』と言ってくださって。誰にでも好かれるのは、この子の才能ですね」(由美さん)
お金をもらえる仕事は少ない
菜桜さんは活躍の場を広げている。「24時間テレビ」(日本テレビ系)や、東京ガールズコレクションがプロデュースする「TGC teen」にも出演を果たした。
「インフルエンサーとしての仕事が増えてきました。そこから別の仕事につながったりもしています」(同)
菜桜さんは順調にモデルとしてのキャリアを重ねている。しかし、モデルの活動を続けていくことは、家計的には厳しいという。
「まだまだお金をいただける仕事は少ないです」
ファッションショーと聞くと、アパレルメーカーなどが主催し、衣装提供や出演料があるものを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、菜桜さんが出演しているファッションショーは、必ずしも衣装提供や出演料があるわけではないという。
「ショーによっては自分で衣装を購入する場合もあります」
もうひとつは交通費の問題だ。会場への移動費や宿泊費は実費になることが多く、数万円かかることもあるという。「お金をもらっているからできる」「家が裕福だからできる」とSNSに書かれることもあるが、由美さんはきっぱりこう言う。
「それは誤解。経済的に苦しくて、昨年の春からダブルワークを始めたくらいですから」