時にはビシッと/由美さん提供

「本人は楽しそうなのですが、ウォーキングはよく間違えるし、『昨日できてたのに、なんで』と思うこともしょっちゅうです。みなさんからは『そんな菜桜ちゃんだからいいんだよ』というあたたかい言葉をもらいますが、プロとしてやっている以上、障害を言い訳にしたくないし、菜桜には毎回、少しでもステップアップしてほしい。当日は、『練習したことを間違えずに出せるかな』と落ち着かない気持ちで見守っています」

あきらめずに頑張ろう

 懸命に努力をして、モデルとして活動している菜桜さん。その姿が、周囲の人々の人生を変えている実感が、由美さんにはあるという。

「前回記事が出たとき(21年2月)に、『夢をあきらめずに頑張ろうと思いました』とメッセージをくれた、菜桜と同年代の子がいたんです。その子が最近、『夢だった看護師になることができました。あのときに菜桜さんの記事を読んでいなかったら、途中であきらめていました』ってメッセージをくれて。すごくうれしかったですね。この子が周りの人の気持ちを変えていってるんだって」

 菜桜さんは、家族にも影響を与えてきた。現在、菜桜さんの姉は看護師として菜桜さんが生まれた病院で働いている。兄も看護師になるべく勉強中だ。2人が看護師の道を志すきっかけは、菜桜さんだ。

「2人とも、菜桜の手術後に面会に来て、看護師を目指そうと思ったと言ってます。看護師さんが処置している様子を見たことが大きかったみたいです。お姉ちゃんは、『菜桜が生まれてこなかったら、私は違う道に進んでた』って」

 記者の前で楽しそうに笑い合う菜桜さんと由美さん。二人の間には親子を超えた信頼関係があるように感じた。そんな母娘の姿を見て、聞くまでもないとは思いつつ、聞いてみたいことがあった。

「菜桜さんを産んでよかったですか」と。産んだ当初は、抱くことすら拒むほど、菜桜さんのことを遠ざけていた過去を知っていたからだ。

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