由美さんは迷いなく答えた。
「もちろん!」
はじけるような笑顔だった。
「本当に生まれてきてくれてありがとうって思います。菜桜がほかのお母さんの子どもだったら困りますもん。生まれ変わってもこの子がほしい。前は健常の子がほしいとずっと思ってましたけど、今は、菜桜がいない人生なんてあり得ないって思います。娘と一緒に夢を追いかけられるなんて、こんな経験普通できないですよね」
そしてこう続けた。
「私、昔より笑ってますね。人生で一番いまが楽しいです。それまでは結構マイナス思考だったんですけど、考え方も変わってきたかなと思うんです。菜桜がやめるって言うまで、続けていきたいですね」
パリのファッションショーへ
取材からしばらくしたある日のこと。記者のスマホが鳴った。由美さんからだった。
「パリのファッションショーに出ることになったんです!」
興奮で少し上ずった由美さんの声だった。
菜桜さんが出演するのは、「PARIS FASHION WEEK GALA」。現地時間3月2日に開催される。「Music for SDGs」代表のマック大久保さんがつないでくれたのだという。現在、クラウドファンディングで資金を集めている。
「『地球の歩き方』を買ってきて、菜桜と一緒にイメージトレーニングしています。地図上でパリの場所を教えると、『遠いね! 新幹線で行くの?』と言っています(笑)。でも、とても喜んで、やる気になってますね」
由美さんは取材時、海外のランウェイへの思いをこう語っていた。
「4大コレクション(パリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドン)で歩きたいですね。無理だって言われるかもしれないですけど、モデルをやるからには目指したいです」
夢に向け、大きな一歩を踏み出した菜桜さん。パリのランウェイは彼女の瞳にどう映るのだろうか。
(AERAdot.編集部 唐澤俊介)