新社長の全国行脚は「現場のガス抜き」?
Aさんの告発から約半年が経つが、現場の意識や体制は改善されたのか。Aさんは社内の変化として、会社側の二つのアクションを挙げる。
一つ目が、昨冬行われた、当時損保ジャパン副社長で今年2月1日から社長に就任した石川耕治氏の全国行脚だ。社員の声を聞こうと、担当役員とともに各地区を回ったというが、Aさんは、「その後何か改革をするといった話は聞こえてこないので、現場のガス抜きを兼ねたパフォーマンスだったのかなと思っている」と話す。
もうひとつが、昨年の10月異動で、保険金査定にあたる人員が全国で20~30人ほど増えたことだ。
損保会社の業務は、営業部門、社員の管理などを行う本社部門、適正な保険金額を算出する査定部門と、大きく3つに分かれている。今回のBM社問題は、査定部門の人員削減を背景に、不正請求を防ぐ態勢が整っていなかったことが要因とされているため、人を増やして手当てしようという判断は妥当だろう。
しかし、これについてもAさんは、「焼け石に水。気休め程度です」と冷ややかだ。
「人員増は微々たるものだし、増員メンバーも査定業務の経験がない本社部門の人が中心で、即戦力にならないばかりか、かえって指導に時間を取られている。現場の余裕のなさは、以前と変わりません。昨年、石川副社長(当時)が支社を訪れた際は、各課から一人対応メンバーを出すよう求められたものの、業務時間を割きたくないと手を挙げる社員がおらず、じゃんけんで決めた部署もあったとうわさで聞いています」