遺伝的素因があっても全ての人が糖尿病を発症するわけではなく、食生活や運動習慣が大きく影響すると考えられている。道長はふくよかに描かれることが多いが、本当に贅沢三昧だったのなら62歳まで生きられたかどうかは疑問だと若林医師は指摘。今も昔も、2型糖尿病は食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足などの生活習慣をコントロールすることで発症や進行を抑制できる病気なのだという。
疫病にかからなかったことで権力を掌握した道長
「道隆に次ぎ、三男・道兼も当時大流行した疫病により死去。上級貴族たちも続々と病に倒れ、生き残った道長が五男にもかかわらず急浮上して権力を独占しました。戦いに勝つことで地位を得られる武士の時代とは異なり、疫病をくぐり抜けて生き延びることこそが、平安貴族の戦い方だったのです」(若林医師)
五男に生まれ出世が難しいと言われながらも政界の頂点に立った道長は、運をつかむ力や、類いまれな生命力も備えていたのだろう。医療が未発達な時代において、病と闘いながら懸命に生きた偉人たち。早死にをもたらす原因や対策を知り、自身の健康管理に役立てることの大切さを現代の私たちに教えているのかもしれない。
(文/酒井理恵)