「男性優位仮説」には、ネガティブな面だけで、ポジティブな面はないと思います。

 さて、こまちさん。他にも、こまちさんが書くように、「ただ単に、暴力とは無縁で生きてきて、痛みが想像できない」ということもあるでしょう。

 僕が繰り返し言う、「シンパシー(同情心)」ではなく「エンパシー」という「他人の立場に立てる能力」を、さまざまな方法で育てることが必要です。

 また、「公正世界仮説」に対しては、適度な距離が取れたらいいなと思います。

 信じすぎず、頼りすぎず、その限界を意識して受け入れる態度がタフで素敵かなと思うのです。

「男性優位仮説」については、もうそんな時代ではないのだという意識を広めることと、「男性至上主義者」を選択して自分を保とうとする人達の経済的・社会的状況を少しでも改善していくことが、結果的に「男性至上主義者」を減らすことにつながるんじゃないかと僕は思っています。

 こまちさん。

 被害者を攻撃する悲しい現状に対して、僕はこんなふうに思っています。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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