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作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします

 この残酷な現実を受け入れたくないから、被害者を責めて、「公正世界仮説」という思い込みを守るのです。

 さて、こう書くと「公正世界仮説」は悪いことのように感じるかもしれませんが、人々がこの思い込み・偏見を手放さないのは、前述したような「毎日を安心して生きられる」メリットがあるからです。

「公正世界仮説」を強く信じている人は、社会心理学的な調査によれば、自己肯定感が高く、長期目標に対して努力し、外向的で協調的な傾向があると言われています。またボランティアや寄付に対しても積極的であるという特徴もあるようです。

「社会は公正である」と信じられるから、自分の努力を信じ、良い結果になることを信じ、明日を信じ、社会を信じ、その結果、前向きなパーソナリティーになれるのです。

 たしかに「公正世界仮説」を信じている人が多い方が、社会の秩序は保たれ、経済的にも発展するでしょう。

 荒れた地域や国では「公正世界仮説」に基づいた映画やテレビドラマ、小説などの物語が広まることで、人々が安心し、治安が回復するということもあるでしょう。

 これが、「公正世界仮説」のポジティブな面です。

 ネガティブな面は、こまちさんが直面したことです。

 世界では残念ながら不条理で非情なことが起こります。

 その時、「公正世界仮説」を強く信じている人は、絶対にそれを認めません。被害者に理由があるから、そうなったんだと、加害者と被害者を同じレベルにしようとします。

 それが「セカンド・レイプ」や、ネットの誹謗中傷や、こまちさんが言われた言葉になると僕は思っているのです。

 真面目な人、不安な人ほど、自分の「公正世界仮説」が崩れることにおびえ、自分の思い込みを守ろうとする傾向が強いと僕は思っています。

 さて、こまちさん。「ホテルのスイートルームに行く女性の方が悪い」「女性にもスキがあった」という言い方は、女性が言う時には、「公正世界仮説」を守ろうとした結果だと思います。

 が、男性が言う時には、それは「男性優位仮説」の結果だと僕は思っています。

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「男性優位仮説」とは