20代のころの鈴木さん。当時働いていたキャバクラのロッカールームにて(写真:本人提供)

 それらはすべて悪意なく、むしろ親しみの表現として発されたものです。それでも、私を傷つけようとして発された言葉以上の破壊力を持っていました。要はすべて、相手のことを特に好きではないというのが問題だったのでしょう。最後のハタチは初対面ですから当たり前ですが、中学の頃も大学時代も、恋という憧れの大人の作法を試してみたい、という気持ちの方が相手への愛着より全然大きかったように思います。

 なんとなく理想とする恋愛の形や男性像というのがあって、それ自体幼い私が想像だけで作り上げたかなり嘘くさいものに過ぎないのに、その形から少しでもズレると許せないという気持ちがあったのだと思います。当然、今好きな人からタンとかニャンとか届いたとしても気持ちはまったく揺らがないどころか、まったく同じ響きに今度は幸福を感じるかもしれません。

 中学時代に私が思い描いていた恋というもの、付き合いやデートというものは、少女漫画やコバルト文庫、連続ドラマなどを参考にした、まったく信憑性のない、今となっては魅力的とは思えないような代物です。それこそ壁ドンとか、せいぜい車庫入れのときの横顔とか、そういう憧れのイメージをツギハギして、都合の良いストーリーに載せるというようなものだったと思います。

 同じく、理想としていた男性像というのもまったくペラペラでぼんやりとしたものでした。ちょっときゅんとしたドラマ俳優の仕草やミュージシャンの言葉から無理やり紡ぎあげたやたらと完璧な理想像は、それこそ少女漫画のヒーローのような現実味のないオトコだったと記憶しています。

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何十倍もカッコ悪く、何億倍も魅力的