鈴木涼美さん
この記事の写真をすべて見る

 作家・鈴木涼美さんの連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」。本日は特別に、悩めるオトコにお越しいただきました。

【写真】キャバクラのロッカールームで笑顔の鈴木さん

Q. 【vol.6】許しがたいフレーズがいくつもあり、狭量な自分に嫌気がさしているワタシ(30代男性/ハンドルネーム「ブルベ冬」)

「オンナのお悩み道場」にもかかわらず申し訳ありません、30代男性です。自分の狭量さについてご相談です。マッチングアプリやLINEなど、テキストベースのコミュニケーションが苦手です。会えば話せるけど、会うまでのテキストのやりとりが苦痛でなかなか会えません。こんばん「わ」(全然かわいくない)とか、甘ったるいデコラティブな絵文字の乱射(マジでむせる)、ビジネスメールの〇〇「さま」(ひらがな!)等々、目に入った瞬間殺したくなるやりとり・フレーズが自分のなかでいくつもあり、狭量な自分が嫌になります。

 かつてフライパンで殴られたこともある鈴木さんが許せないオトコのふるまいはありますか。またそういう許しがたいことへの閾値の低さをいかに乗り越えていけばいいでしょうか、あるいはこのままでもいいのでしょうか。

A. 条件や欠陥が吹っ飛ぶような恋以外はしないでいい。

 中学生の頃、初めて持ったPHSで好きな男の子と片仮名二十文字を十円で送ることができたPメールのやりとりをしていて、「ゴハンタベタン?」という彼からのメッセージがなぜか猛烈に「タン?って何?!」と気色悪くなって一気に恋が冷めたことがあります。大学に入ったばかりの頃、一緒に寝ていた男が明け方、「好きだにゃん」と言ってきて、「と付き合った覚えはないわ!」とやはり心が急速冷却されたこともあります。つい先日、出張先で入ったホストクラブでハタチくらいの男の子に「すずちゃんは仕事なにしてるの?」と言われて、夕食に食べた餃子が全部逆流してくるほどオエっとなったのも今思い出しました。

著者プロフィールを見る
鈴木涼美

鈴木涼美

1983年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にAV女優としてデビューし、キャバクラなどで働きつつ、東京大学大学院修士課程を修了。日本経済新聞社で5年半勤務した後、フリーの文筆家に転身。恋愛コラムやエッセイなど活躍の幅を広げる中、小説第一作の『ギフテッド』、第二作の『グレイスレス』は、芥川賞候補に選出された。著書に、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図は読まない』など。近著は、源氏物語を題材にした小説『YUKARI』

鈴木涼美の記事一覧はこちら
次のページ
今、“タン”や“ニャン”が届いたら…