「PRIDE.1」でのヒクソン・グレイシーvs.高田延彦戦=東京ドーム、1997年10月11日(写真:木村盛綱/アフロ)
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 お笑い芸人が世界大会で優勝というニュースで話題のブラジリアン柔術。格闘技ファンの間では以前から知られていたが、最近実際に始める人が増えているという。AERA2024年1月22日号より。

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「俳優の岡田准一と玉木宏がブラジリアン柔術世界大会出場へ」

 昨年8月初旬、このニュースが大きな話題を呼んだ。さらに大会後の続報では、「ガリットチュウ・福島善成が優勝。岡田・玉木はともに2回戦敗退」と、別の名前も入ってきた。「え、世界大会優勝? しかもどうしてそんなに芸能人が出てるの?」という疑問を持った人も多かったに違いない。

柔道がブラジルで発展

「そもそもブラジリアン柔術って何?」という読者もおられるだろう。ブラジリアン柔術とは、その名の通りブラジルで発展した格闘技で、1915年に日本から渡航した柔道家・前田光世が伝えた柔道を根源として、独自の発展を遂げたものとされている(諸説あり)。

 その柱となった「グレイシー柔術」が、1993年にアメリカで初開催された格闘技大会「UFC」をきっかけとして、世界的に大ブレイク。日本でも翌94年にグレイシー一族の中で最強とされる「400戦無敗の男」ヒクソン・グレイシーが初来日を果たし、97年には東京ドームでの「PRIDE.1」でヒクソンが高田延彦に勝利して脚光を浴びた。「日本ブラジリアン柔術連盟」はこの年に発足している。

 90年代に大きく発展した総合格闘技の世界でたびたび柔術家が活躍したことから柔術の認知度が上昇していき、日本国内で道場や大会数も増加。ここ数年は人気格闘技イベント「RIZIN」で静岡の「ボンサイ柔術」に所属するホベルト・サトシ・ソウザがチャンピオンになるなど、柔術は何度目かの注目を浴びている。芸能人とブラジリアン柔術の関係も、実は短くはない。2000年代、「PRIDE」シリーズが人気を博した時期には柔術を学ぶお笑い芸人が増え、格闘技イベントの中で柔術マッチを行ったり、柔術の大会に出場する機会も増えた。

 岡田らが出場した大会の正式名称は、「ワールドマスター柔術選手権2023」。IBJJF(国際ブラジリアン柔術連盟)が主催するもので、昨年は8月31日から9月2日までの3日間、ラスベガスで開催された。「マスター」とは30歳以上を対象とした部門で、29歳以下は「アダルト」。この「アダルト」の世界大会は「ムンジアル」の名称で別に開催され、こちらがブラジリアン柔術の世界では最高峰の大会とされる。

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