週末もイベントなどが目白押しで忙しいが、家族が集まる食事会はとても大事にしている。料理は自らが作り、息子や孫、妹家族、叔母たちが集って賑やかな時間を過ごす。兄家族もよくやってくるという(撮影/山本倫子)

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 藤崎は朝8時から夜10時まで、休みなく出勤した。誰かに言われたわけではない。休むのが不安だったのだ。一方で、朝食や弁当づくりなど、夫や家族の世話もしていたため大忙しとなった。現在、墨田区議会議員を務める一人息子の剛暉(こうき・33)は子どもの頃から野球をしていた。中高時代の、こんなエピソードをよく覚えている。

「母も忙しいのでユニフォームは自分で洗濯していたんですが、あるとき、あまりに疲れて干せなかった。それで、母に干しておいてと伝えたんですが、母も疲れて寝落ちしてしまったんです。朝、ユニフォームは濡れたまま。すかさず手渡されたのがハンガーでした。授業中、教室のベランダにユニフォームを干しました(笑)」

39歳まで専業主婦だった。そこから、まったく想像していなかった人生が待ち構えていた。「面白そう、楽しそうと直感で思ったところに飛び込んできました」(撮影/山本倫子)

 09年、夫は2度目の都議会議員選挙に挑もうとしていた。ところが直前に脳梗塞に見舞われてしまう。左半身が不自由に。墨田区役所で1千人以上の支援者を招いての決起集会。剛暉の押す車椅子で現れた夫は、出馬断念を報告する。そして藤崎の仕事には、夫の介護が加わった。さらに翌年、思わぬ事態が起こる。109のショップは経営状態が良くなり将来の道筋が見えたので血縁者に継がせたい、と言われてしまったのだ。藤崎は新たな仕事を探さねばならなくなった。

 仕事を失った藤崎が真っ先に考えたのは、自分に何ができるのか、だった。浮かんだのは、料理。子どもの頃から数十人分もの料理を作ったりした。好きだったし、得意でもあった。ひとまず飲食のアルバイトをすることにした。

(文中敬称略)(文・上阪徹)

※記事の続きはAERA 2024年1月22日号でご覧いただけます。

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