ユニークなメニューはSNSでもよく話題になる。キャラクターグッズも大人気だ(撮影/山本倫子)
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 ドムドムフードサービス代表取締役社長、藤崎忍。1990年代に全国約400店を展開したドムドムハンバーガー。その後、経営不振にあえいだが、今、人気が再燃している。カニ一匹を使った「丸ごと!!カニバーガー」のようなメニュー開発に加え、ぞうのキャラクターの商品化など話題に事欠かない。この成長を牽引したのが、社長の藤崎忍だ。専業主婦から社長になるまでに何があったのか。その人生を追った。

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 東京・赤羽にあるスーパーマーケット、イオンスタイル赤羽がリニューアルオープンしたのは、昨年7月28日のことだ。1階には、赤と白を基調とした明るい内装のハンバーガーショップが開業した。ドムドムハンバーガー(以下、ドムドム)だ。建て替えにあたって2020年に閉店したときのことを、今も覚えていると藤崎忍(ふじさきしのぶ・57)は語る。

「お客さまに、とにかく惜しんでいただいた閉店だったんです。多くの方に、本当に愛していただけたお店でした。スタッフたちも、最後の営業日には、涙、涙で。つらい閉店でしたね」

 だが、ドムドムは再び戻ってきた。開店当日には、藤崎も驚くほどの行列ができる。世代や性別を問わず老若男女が作った列は、二重にしても店舗内に入りきらなくなった。とうとう外まで溢(あふ)れ出て、駐車場の前の道にまで長く伸びたという。だが、記録的な猛暑だったのが昨夏だ。

「本当に心配で、イオンの方に頼んで、外に大きな扇風機を二つ持ってきてもらったんです。どれほど効果があったのかは、わからないのですが」

 列が横切る隣の店舗には、藤崎自らお詫(わ)びに行った。迷惑をかけていると頭を下げると、「自分たちのお店もちょうど認知してもらえるので」と言ってもらえた。最も列が長かったとき、ハンバーガーを買うまでに40分はかかったという。結果的に、目標としていた予算の2倍を達成した。

「やはりドムドムには、コアなファンが多いと改めて思いました。本当にありがたいことでした」

 アメリカからマクドナルドが日本に上陸したのは、1971年。それよりも1年早い70年に、ドムドムは日本初のハンバーガーチェーンとして誕生した。最盛期の90年代には全国で約400店を展開する人気店になった。ドムドムというと「初めてハンバーガーを食べた」「高校時代、みんなで訪れた懐かしいファストフード店」などと思い出す中高年も多い。だが、2000年代に経営不振に陥り、店舗は急減する。

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