本社では社員とデスクを向かい合う(撮影/山本倫子)

下町の大家族で育つ 39歳で初めて就職する

 2017年、ホテル事業などを手がけるレンブラントホールディングスの傘下となり、現在は27店舗を営業するが、このドムドムが今、大きな人気を博しているのだ。懐かしの世代だけではない。「丸ごと!!カニバーガー」など、大胆でユニークな商品がSNSなどで話題になり、若者たちに大ヒット。マスコットキャラクター「どむぞうくん」を使ったグッズやファッションブランドとのコラボ商品も驚くほど売れているという。21年3月期には、赤字から黒字に転換を果たした。その立役者となったのが、18年から社長を務める藤崎だ。実は39歳まで就職をしたことがなかったという、その驚きの経歴もまた、話題となった。

 生まれは東京・墨田区。家業の煎店などを営みながら地方議員をしていた祖父、祖母、その娘である母、父、兄2人と妹1人の大家族で育った。都議会議員をしていた父のもとには、多くの支援者がよく駆けつけた。正義感がとても強く、筋の通らないことは決して許さなかった父だった。

「選挙期間になると、近所の人たちが手弁当で応援に来てくださる。私が知る選挙は、この人を政治家にしようという純粋な支持者に支えられ、送り出されていた父の選挙でした」

イベント会場で一緒になった「中津ブルワリー」のビールを(撮影/山本倫子)

 人の出入りも多く、家業も忙しかった。人前で挨拶をしたりするのは当たり前。家でもよく手伝った。自然な流れで家事をこなすようになり、そこで得た料理の腕が後に生きることになる。

 親の勧めで東京・渋谷にある青山学院に小学校から通った。だが、「絵に描いたような下町育ちだった」という藤崎には、なかなか馴染(なじ)めなかった。本当の意味で心が開けるようになったのは、高校時代にハンドボール部に入ってからだ。部で一緒だった小野雅美(56)は当時をこう語る。

「グラウンドで土まみれ、泥だらけになる毎日でした。練習がないのは、年に数日。およそ青山学院らしくなかったですね(笑)。試合に負けたら、真剣に悔しがる姿が強く印象に残っています」

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