宮城県のイオンモール新利府 南館で(撮影/山本倫子)

“ギャルの聖地”で店長に 5年で売り上げが2倍

 高校を卒業すると付属の短大に進んだ。進学先にこだわりもなく、社会に出てバリバリ働きたいという願望もなかった。共に近くで働く両親を見て育ったこともあり、自営業でお互い助け合い、一緒に家を切り盛りするような結婚ができれば、と思っていた。そして短大に入学してすぐに出会ったのが、後に夫となる藤崎繁武(よしのり)。当時は国会議員秘書で、墨田区議選への出馬を決意、父の事務所に出入りしていた。入学祝いに開いてくれた食事会をきっかけに交際が始まる。両親には内緒だった。短大を卒業した87年、夫は当選。もともとすぐに結婚するつもりで就職活動もせず、当選後に結婚、専業主婦になった。

「父の東京都議会議員選挙も手伝っていましたから、夫の区議選と合わせ、2年に一度は選挙でした。当時は支援者とコミュニケーションを作る機会が多くあり、毎日とても忙しかったんです」

 夫は12歳上。精神的にも頼っていた。夫に従って尽くすのが美徳、常に夫を立て、彼のために何かができる自分でありたいと意識していた。ところが、そんな日々が一変する出来事が起こる。

 05年、墨田区議会議員を5期務めた夫が都議会議員選挙に挑戦した。政界引退した父の地盤を継いだこともあり、当選は間違いないと思われた。ところが、直前に民主党から新人が出馬、予想外に票を獲得、僅差で落選する。しかも直後、夫は心筋梗塞で倒れ、一時は危篤状態に。一命はとりとめたが、しばらくは安静にして治療に専念することになった。このままでは夫に頼っていた収入が途絶えてしまう。自分が働くしかない、と決意した。

「まずはツテをたどってみようと、まわりの人たちに話をしたんです。すると友人から、母が経営しているお店で働かないか、と誘ってもらえて」

 これが、SHIBUYA109のアパレルショップだった。当時、39歳での初めての就職先が“ギャルの聖地”のショップ店長となったのだ。

「実は不動産の資格を取って、父の会社で働く選択肢もあったんです。でも、109はなんだか面白そうだな、と思って」

 もともとファッションは好きだった。だが、もう一つ、理由があった。

「世界を大きく変えたかったんです。つらい出来事があったところの近くにいたら、なかなか目線を変えられない。それより、思い切り振り幅があったほうが、気持ちもラクだったんだと思います」

 そしてこの初めての就職で、いきなり結果を出す。カジュアルなTシャツなどを売る店だったが、みるみる業績を上げ、1億円だったショップの年商を、5年で2倍の2億円にしたのだ。

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