さらに、近年の研究で納豆に含まれる「スペルミン」というタンパク質の一種が細胞の代謝を促進し、体内の炎症を抑えることがわかり、健康長寿にも関係するのではないかと注目されています。
納豆には、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛など、現代人に不足しがちな栄養素も含まれています。特筆すべきは、ビタミンKが豊富なことです。ビタミンの名称は発見された年代順に決まりますので、Kは発見されたのが最も新しいビタミンなのですが、近年の研究で重要な働きがあることがわかってきて、ビタミンKの話題もよく耳にするようになりました。
ビタミンKは動脈壁からカルシウムを抜き取り、骨へ移動させる作用があり、骨を作るのに欠かせません。動脈壁からカルシウムを抜き取るということは、血管へのカルシウムの沈着を起こりにくくするため、動脈硬化の予防効果もあります。納豆が作り出す酵素の一つ「ナットウキナーゼ」も消化管から血液中に取り込まれ、血液をサラサラにして血栓を予防する効果があります。
和食に特有のスーパーフード、納豆の恩恵を享受しない手はありません。毎日納豆を食べる習慣を持つことで、長期的に体を生活習慣病から守り、健康長寿に寄与することが期待できます。
国立がん研究センターのチームによる研究では、過去に循環器疾患にかかったことのない45〜74歳の男女約9万人に対する追跡調査で死亡リスクを調べると、毎日25g(半パック程度)の納豆を食べるグループは、全く食べないグループより循環器疾患で死亡するリスクが男女とも2割少ないという結果が出ています(注2)。毎日半分~1パックの納豆を食べる習慣を取り入れましょう。
納豆を冷蔵庫に常備して、おかずの定番にしてください。白いご飯の食べ過ぎには注意が必要ですから、「納豆はご飯にかける」というワンパターンな食べ方ばかりではなく、豆腐にかけたり、青菜と和えたり、納豆オムレツにしたりと、色々な美味しい食べ方を工夫してみましょう。
注1 Soy Food Intake and Pancreatic Cancer Risk: The Japan Public Health Center-based Prospective Study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2020 Jun;29(6):1214-1221. doi: 10.1158/1055-9965.EPI-19-1254.
注2 Japan Public Health Center-based Prospective Study Group. Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study. BMJ. 2020 Jan 29;368:m34. doi: 10.1136/bmj.m34.