2018年に販売が始まった輪島プリン

 配っていた「輪島プリン」は、輪島朝市の観光客が減っているなか、中浦屋が新たな客層の取り込みを目指し、2018年にプリン専門店を輪島朝市にオープンした。能登半島の牛乳と卵を使用しており、老舗和菓子店の技術で製造していることが評判になった。その後、「金澤プリン」も生まれるなど、朝市でも人気商品に成長していった。
 
「夜、高台や避難先から朝市から火の手があがっているのが見えました。朝市は狭い路地が入り組んでいます。あまりの火の勢いに、路地でこれ以上広がらないような消火をしていました。しかし、風向きや火の勢いなどで、全部燃えてしまった。朝市で出店していた方のなかには、連絡がとれていない人もいて心配です」
 
 輪島市では、2007年3月にも震度6強の大きな地震があった。その時も、中浦屋は蔵が倒壊し、隣接していた工場も使えなくなり、翌年に朝市に近い場所に移転した。

明治時代にも大火に

「2007年のときはまだ大きな借金もなかったので、なんとか工場を再建できました。その後、プリンのおかげで業績が伸びたのですが、コロナ禍でまた落ち込みました。昨年、ようやく売り上げが上向いてコロナ禍前の水準に近づき、今回は正月は書き入れ時と意気込んでいたのですが。明治時代にも、朝市周辺では『河井の大火』と呼ばれる大きな火災があって朝市は焼けてしまった。実は、うちの初代が、焼けた跡に店を出したのが本店になった場所。本当にうちは、災害と切り離せないと痛感します」(中浦さん)
 
 自慢のプリンは当初、老舗の和菓子店が「どうしてプリン?」と地元でも不思議に思われることがあったという。中浦さんは、
 
「輪島といえば輪島塗です。柚子を買い求めていただけるお客様も高級な輪島塗をお目当てに、という方が多かった。しかし、行政は、幅広い観光客をターゲットにし始めていたので、高価な柚餅子だけでは難しいと思いました。マーケット調査をした結果、幅広い客層にアピールできるのはプリン、と判断し、女性スタッフを中心に開発に取り組みました。それがお客様のニーズに合致したと思います」
 
 と話した。

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地震後の中浦屋の外観と店内の様子