もともと、LDLは肝臓から末梢の組織へ、HDLは末梢の組織から肝臓へコレステロールを運ぶ運搬トラックのような役割があるのですが、悪玉と名付けられてしまったLDLも本来は悪者ではなく、どちらも組織の炎症から体を守るために大切な役割を担って働いてくれているのです。
このため、全身の細胞が傷んでコレステロールを必要とするときにLDLが増え、必要でなくなったときにはHDLが増えると考えるほうが、理論的に無理がありません。
LDLコレステロール値が高いということは、生活習慣が乱れて細胞が傷ついており、その修復のためにコレステロールを必要としていると考えるべきであり、むやみに医薬品を使ってLDLを下げてしまうことは、かえって修復を遅らせてしまうリスクがあります。
コレステロールの摂取基準に関しては、国内外でもさまざまな議論があります。日本では日本動脈硬化学会の基準に基づいてLDLコレステロール140mg/dLとする病院が多いですが、病院によっては120mg/dLとするところもあります。一方で、アメリカ心臓病学会、および心臓協会の2013年の基準では190mg/dLと差がありますし、日本脂質栄養学会はコレステロールを下げる医療自体をすすめていません。