
「きれいも汚いも希望も諦めも様々な人間の感情を、触れたら壊れてしまいそうな繊細なところを新田さんは純粋に素直に受け止めて歴史を編んでいくのです」(澤田知子氏・選評から抜粋)
■写真が「人」を伝える
新田さんの手法はきわめてオーソドックスだ。中判の一眼レフカメラとカラーフィルムを使う。写される人と長い時間を過ごし、何げない瞬間を待ちシャッターを切る。その写真はけして目新しいものではないが、この後長い年月を経ても色褪せることはないだろう。そこにははっきりと人間の営みが写っている。
「SNSで遠くの他者と安易に『論争』ができてしまう時代になり、その傾向は新型コロナウイルスの流行以降、加速しているようにみえる。新田さんの写真は、ともすれば見過ごされてしまうほど些細ではあるが、どんなに便利になっても、生きている以上は決して省略することができないなにかを、静かにわたしたちに見せてくれる」(長島有里枝氏・選評から抜粋)
写真の現在地点を意識し多くの先鋭を称揚してきた木村伊兵衛写真賞だが、いま新田さんを選出するのは意外な回帰ではなく、必然とも言えるだろう。(写真編集者・池谷修一)
※AERA 2023年4月3日号