20代のころの鈴木さん。おそらくホストクラブに行った帰り、朝まで営業している横浜の定食屋にて(写真:本人提供)

 私も実は二十代から三十五歳を過ぎるまで、人と住んでいた年月の方が長く、女友達とルームシェアをしていた期間もありますが、それ以外は付き合っては同棲して、別れては急いで引っ越しをして、また彼氏ができると一緒に住んで、というのを繰り返していました。本当に大喧嘩をして別れた時には、歌舞伎町の内見や契約書なしで借りられる物件を扱う不動産屋に駆け込み、二十万円を現金で払って鍵を受け取り、その日に赤帽を呼んで引っ越したということもあります。

 それで荷物をまとめて当の物件に行ってみたら、何かが足りない。そこはもともと事務所用の物件だったからか、洗濯機置き場がないことに気づきました。住んでいたのは四か月くらいだったと思いますが、コインランドリーの不思議な客層を観察しながら目の前の公園で乾燥が終わるのを待つのはなかなか面白い時間でした。ちなみに住んでいる人が少ないそのビルの私の隣の部屋はデリヘルの事務所だったので、何度かエレベーター前でスタッフと思われる知らない男性に、「お疲れ様です」と挨拶されました。

 ただ、二十代だった頃にはできたそのような生活が、今できるかというとなかなか想像しにくいのも事実で、人は年々腰が重くなるのだと実感しています。その時は勢い任せで行動できたものの、三十代になって一緒に暮らした男とは、関係が冷え切ってもなかなかお互いに引っ越しをしようという気にならず、「来週考えよう」と思い続けて結局半年近くずるずるとそのまま一緒に暮らしていました。

 別れた時には三十二歳になっていて、会社も辞めてフリーランスになったところだったので、一人きりになることへの不安もあったし、事情があって私の名義で借りていたマンションだったので先に彼を追い出さなくてはならず、この作業が結構面倒だったというのもあります。彼とは別に好きな人ができたタイミングで、ようやくこのままでは家にも呼べないと重い腰をあげたのだと思います。

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