マラカスを持ってリハビリセンターの患者らと音楽で交流する安倍昭恵さん=2018年10月26日、北京
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。自民党の派閥の裏金疑惑が問題になっている。今回は、故・安倍晋三元首相の妻、安倍昭恵さんについて。

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 安倍派の国会議員をめぐる裏金疑惑は、5年間で5億円に上ると言われている。それにしても疑惑の政治家たちの図太さが凄い。「説明責任を果たす」と簡単には言うが、誰もまともな説明はせず、4000万円の裏金疑惑が報じられた谷川弥一衆院議員にいたっては、質問した記者に切れまくり、「頭悪い」と言い放った。崩壊の速度は、思ったよりも速いかもしれない。

 安倍さんが生きていたら、この事件はどう報じられただろうか。そもそも明るみに出ていただろうか。恐ろしいことだが、安倍さん時代に政治家の問題が解明されることはほぼなかった。人一人の命が失われた森友学園問題ですら、説明を果たすべき人は何も話していない。……そういえば、昭恵さんは、今、どうしているのだろうか。久しく顔を見ていない。

 安倍さんが亡くなったとき、言葉を選ばずに言えば、「これで昭恵さんは自由になるんだろうなぁ」と思ったことを思い出す。大麻について奔放に語り、韓流好きを隠さず、原発反対やTPP反対をにおわし、居酒屋を経営するような昭恵さんのそれまでの振る舞いからは、「総理の妻になんかなりたくなかった」というのが本音ではないのかと思ったからだ。これからは「安倍家のヨメ」という立場から解き放たれ、怖い(感じがします)「姑」からも自由になり、のびのびと外国にでも行ってボーイフレンドをつくったりして……などと勝手なことを想像した。国を揺るがす大事件への関与を指摘されても、どういうわけか焦燥感や後悔や恐怖や悲壮感が似合わない(というか、漂わない)昭恵さんならば、そんなふうに軽やかに第二の人生を歩むのも不思議はないと考えたのだ。

 実際には、昭恵さんはどう過ごしているのだろうか。メディアでは、昭恵さんが「晋三記念館」を構想しているとか、それも3カ所に建てるなどと言って周囲の人を呆れさせているとか、安倍さんの一周忌のお別れ会をめぐって自民党関係者と揉めたとか、安倍さんの2億円の政治資金を非課税で相続したことが問題になっているとか……相変わらず「安倍晋三の妻、昭恵さん」らしい様子である。

 昭恵さんらしい……というのを言語化するのは難しいのだが、一言で言えば間違った印籠をもった黄門様である。

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「黄門だけど庶民派」の逆印籠使い