「小学生の娘を、他人の家の男性が膝に乗せてじゃれあっていたら、普通に考えたら『キモイ』と思いますよね。誰かの家に行っても、小さな子供は親の目が届くところで遊ばせるはずで、ましてや男性や少年の部屋で、娘を1人で遊ばせるなんてことはさせないでしょう。ところが、エホバの証人の親たちは、どこも我が家かのように安心しきってしまい、娘が膝に乗せられていても『きょうもかわいがってもらってよかったね』などと言ってしまうのです」(前出の女性)

 事実、アンケートでも、

「食事招待で被害にあった。大人は大人同士のおしゃべりに夢中でまったく子供の様子を見ていなかった。加害者は信用ある年の若い2世で、加害者がいるなら安心と大人たちは思っていたのではないか」

「親とともに加害者宅に訪問。加害者の個室に呼ばれて被害にあった」

「我が家での『交わり』の際、私の部屋に入ってきて2人になりベッドに倒され、性交渉させられそうになった」

「若い夫婦の信者宅に泊まりに行き、定期的に被害にあった」

 などの回答があった。

王国が第一、子どもは二の次

 信者の家族同士の、根拠のない安心感に基づいた交流の場。加害者の立場から見れば、「疑いを持たない」心理を利用し、加害行為をする環境を容易に作ることが可能だ。「楽園ができてしまう」と元2世信者らも危機感をあらわにする。

 さらに、性被害を訴えても2人か3人の目撃者がいないと、教団内の宗教裁判である「審理委員会」は開催されない。逆に訴えた側が処罰されたケースもあるなど、被害者の立場が圧倒的に弱い。

「仮に加害者が長老などの地域の幹部だった場合、『あの人がそんなことするはずがない』と親が聞く耳を持とうとしないケースもあるのです」(綿和さん)。

 エホバの証人は婚前交渉を禁じるなど性的行為のルールが厳しく、性的にゆがみやすい環境にある。

 綿和さんは、「エホバの証人の親たちは王国が第一で、子どもは二の次。人の扱い方にゆがみがある」と指摘し、こう続けた。

「子どもたちが性被害に遭いやすい構造的な問題は今も続いています。現役信者の大人たちにこそ知って欲しい事実で、信者だからと安易に信用せず、自分の子どもを守って欲しいと思います」

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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