回答では、
「幼稚園のころからマスターベーション、セックスという単語を頻回に耳にしてきた。年齢にそぐわぬ性的知識を問答無用で与えられた」
「年端もいかない子供が(出版物に書かれていた)『オーラルセックス』『ペッティング』などの言葉を音読させられる辱めを受けた。今思えば完全な性的虐待」
「『マスターベーションがなぜだめか』を、場面を設定して説明させられた。大変苦痛だった」
「エホバの証人に参加していなければ、段階を踏んで性の知識を得ることができ、現在までに至る性的倒錯と自己嫌悪に悩むことはなかっただろう」
など、その行為がどのようなものかを知らないうちに、“学び”を強制されていたケースが大半をしめた。
(3)の「審理委員会での性的虐待があった」と回答したのは42人。うち未成年は15人だった。
親の前で「避妊具の使用は? 射精は?」
エホバの証人は婚前交渉を禁じているが、性行為をしたなど「罪」に当たる行為をした信者には、「審理委員会」と呼ばれる宗教裁判のような場が設けられ、地域の幹部たちに詰問される。反省が見られない場合、親や信者らとの関係を断つ最も重い「排斥」処分が下されることもある。
数々の回答は、未成年を根掘り葉掘り詰問する、社会常識からかけ離れた実態を表していた。
「性行為を行った回数、何月何日、何時に始めたか、何分に挿入したか。エクスタシーを感じたか。50代と70代の長老から、親の前で聞かれた」
「長老と母の前で、事細かく性行為の流れを話すよう強要された。キスの有無。避妊具の使用は。射精はどうしたのかなど」
「具体的に相手の性器に触れたか。それは手か口かを聞かれた」
「どのような性行為を行ったか。どんな気持ちだったか(興奮したかとか)。密室で長老3人を前に、話さざるを得ない圧力を感じた」
調査にかかわった元2世信者の道子さん(仮名)は、
「エホバの証人の子供たちは、たとえばパン屋さんになりたいだとか、将来の夢を語ることすら許されない。その状況で性被害を受けてきています。被害を訴えようという力がない人もいるはずで、もっとたくさんの被害者がいると思っています」
と氷山の一角である可能性を指摘する。