聞き取り調査をした公認心理士によると、大人になってからも精神的な被害が回復していない被害者も多かったという。
「(ルールによって)抑圧された大人の性欲が、子どもに向けられている。教団の子供たちを救ってほしいと聞き取りをした全員から聞くことができました」
JW児童虐待被害アーカイブはあくまで任意団体で、活動には限界があり、当事者たちもそれを認める。
代表の綿和孝さんは、「公的調査をしていただき、被害者たちを救済する制度を作っていただきたい」と、国に期待を寄せた。
身近な相手から性被害
エホバの証人の児童に対する性的虐待の実態調査が公表されたが、定期的に集まるグループ内での被害が最も多く、行為の場所も「信者の自宅」が最多だった。
なぜ身近で被害に巻き込まれ、誰もそれに気づかないのか。調査にかかわった元2世信者は、
「エホバの証人には性暴力や性被害が起きやすい、特有の環境がある」
と口にする。
綿和さんらによると、エホバの証人の信者たちは「交わり」と呼ばれる、信者同士や信者の家族同士の親密な交流を大切にするという。
子どもたちの「お泊まり会」。「食事招待」と呼ばれる信者の家に招かれて食事をするイベントや、レクリエーションを催したりして親しく付き合うのだ。
良い関係づくりにも映るが、綿和さんら元2世が問題視するのは、家族同士の「距離感の異常さ」だという。
例えば、男性や思春期の少年がいる家庭に、幼い娘を一人で泊まりに行かせてしまう。
「今思えば不思議なほど、毎年のように他人の家に一人で泊まりに行っていました」と元2世の女性は振り返る。
家族で遊びに行った際、相手の家の男性や思春期の少年が、自分の娘を膝の上に乗せたり、身体接触を伴う遊びをしたりしていても、誰かがとがめることはない。
遊びに行った家で、男性や少年の部屋に、自分の娘が一人で入り、いわば閉鎖された状態で遊んでいても、親たちは不安を抱かずおしゃべりに夢中になっている。