有本均(ありもと・ひとし)/マクドナルド、ユニクロの教育責任者を経て、2012年にホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立(写真:本人提供)

「多様性の時代、個々に寄り添うことが、これまで以上に求められています。その一方で、例えば、人前で褒められたくないなど、目立ちたくない意識が強い。そのため寄り添い方にも配慮が必要です」(長田さん)

 一つ目のコツが、精神論で「やってみろ」ではなく、指示する時にはそれをやる意味や意義をしっかり伝えること。ネット検索で即時に何でも調べられる時代に育った世代でもあるゆえに、非効率や無駄な努力を嫌い、コスパやタイパ(タイムパフォーマンス=時間的効率)を求める傾向が強く、「見て覚えろ」といった昔ながらのやり方は通用しない。人材育成や組織作りに詳しい有本均さん(67)は言う。

「やってもらいたいことは、早めに具体的なやり方を教えること。その際に、なぜそれをやるのかという意味付けが必要です。仕事が自分や会社の成長につながり、それが社会の役に立つかどうかという点を重視する世代でもある。やる意味が腹落ちしているかどうかで、仕事に対する取り組み方も変わってきます」

目立つことを嫌う傾向

 仕事の全体像や一人前としてのあり方を、早い段階で提示することも有効だ。前出の長田さんの会社では、新入社員に向け、社員として一人前と呼べる状態までの道筋について、必要なスキルとステップについて、図を用いて説明している。会社全体の業務を分解し、それぞれの目的と意味を含めて伝えるのだ。

「こうすることで仕事について感情ではなく仕組みで説明することができます。新入社員とは定期的にミーティングし、何がステップアップしていて、何が足りていないか、お互いの認識をすり合わせます」(長田さん)

 二つ目が、周囲の視線がある状態の中で、意思表示がしづらい世代であることを踏まえること。オンラインでのコミュニケーションに慣れているため、例えば電話が苦手な人も多い。特にSNS世代でもあるZ世代は、周りからどう見られるかという意識が強く、良くも悪くも目立つことを嫌うという。

「そのため、“褒める時はみんなの前、叱る時は個別で”という従来型のコミュニケーションに抵抗を感じる人も少なくない。褒める時は人前ではなく、個別のやり取りの中で、さりげなく褒めること。持ち物一つとっても、他者からの視線をとても気にする世代で、“これをやりたい人”という挙手制も手がなかなか挙がりづらい。とにかく周囲との調和を大事にしているからこその傾向でもあります」(同)

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