多様性の時代、人材を「会社が理想とする型」にはめようとする教育は成り立たない。分かり合えないと思った時こそ、内省のチャンスだ(撮影/写真映像部・馬場岳人)
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 Z世代と管理職世代には、仕事への意識や価値観に大きな差があると言われる。ギャップを超えて、良い関係性を築くコツについて識者に聞いた。AERA 2023年12月11日号より。

【図表】Z世代とのコミュニケーション8つのコツがこちら

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「Z世代=引っ張ってもついてこない世代。これまでの常識は、基本的に下の世代には通用しないと思ったほうがいい」

竹内義晴(たけうち・よしはる)/NPO法人しごとのみらい理事長。組織作りの研修や講演などを行う。2017年からサイボウズ複業社員(写真:本人提供)

 こう話すのは、組織づくりの企業研修や講演などを行う竹内義晴さん(52)。「これまでの指導の仕方が通じない」「どうやったら伝わるのか分からない」──竹内さんの元には、Z世代をはじめとした若い世代との世代間ギャップやコミュニケーションに悩む管理職世代の声が多数寄せられている。

 Z世代は、仕事の目的が「地位や年収」など外発的なものより、「やりがい」や「充実」など、内発的な価値観を重視する傾向にある。生粋のデジタルネイティブ世代でもあり、SNSがコミュニケーションツールとして欠かせない。そうした影響から、ゆるいヨコのつながりの構築が得意な半面、タテ社会に慣れておらず打たれ弱いとも言われる。

見て覚えろは通用せず

 また、以前なら“コミュニケーションの問題”とされた世代間ギャップが、“多様性”という視点に変わりつつある。これまで正しいと認識されてきたコミュニケーションのスタイルを一方的に押し付けること自体が合わなくなってきている。

「仕事のやりがいや目的意識も多様化している世代。若手世代とのギャップを縮めるためにできることは、ただ一つ。私たち管理職世代が変わることです」(竹内さん)

 具体的に、どう変われば良いのか。

「前提として、求められるのは、リーダーシップより“寄り添い型”の上司。背中を見て覚えろ、まずはやってみろといった姿勢は非効率で信頼されにくい」

長田麻衣(おさだ・まい)/マーケティング会社を経て、2018年に若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」設立。毎月200人の若者と接する(写真:本人提供)

 こう話すのは、Z世代をはじめとした若い世代の意識に詳しいSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣さん(32)。長田さんが今年、Z世代を対象に「理想の上司像」について聞いた「Z世代の仕事に関する意識調査」によれば、1位の「分かりやすい言葉で説明してくれる」が53.3%と半数を超え、次いで「丁寧に教えてくれる」(46.7%)、「気軽に相談しやすい」(45.3%)と続き、寄り添い型のコミュニケーションを強く求めているという結果だった。なお、ひと昔前までの上司像に欠かせなかった「リーダーシップがある」は27.3%と8位だった。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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