中学受験に向け、小学校低学年から塾通いをスタートさせる子どもたちも少なくない(写真:GettyImages)

 都心部を中心に中学受験に向けた塾通いの低年齢化が加速している。しかしそこには、親が軽視できない影響が潜んでいる。AERA 2023年12月11日号より。

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 早めに入塾したからといって、円満に中学受験を終えられるとも限らない。

 神奈川県在住で今年、娘の中学受験を経験した母親は言う。

「早くに入っても、後から入ってきた子に抜かされるとやる気も削がれるんです」

 女性の娘は小3の夏期講習から入塾し、塾の新年度のはじまる2月に受験コースに切り替えた。5年生の1月頃、突然「(塾に)行きたくない」と言いだした。話を聞くと、塾の授業が「難しくて分からない」ということだった。塾に面談を申し出て様子を聞いても「なにも問題はないですよ」と言われるだけだった。

 ところが、成績はウソをつかず、4教科で64もあった偏差値は6年生で40台まで落ち込んだ。

「早めに入ると人数も少ないから良い成績だっただけなのか、人数が増えてみんなが全力を出し始めたら太刀打ちできなくなったのかなと思いました」

体調にも異変が出て

 今年中学に上がった娘と小学4年生の息子を持つ都内在住の40代の会社員女性の長女も、プレッシャーにやられてしまった。小3の秋に入塾し、本人が思いのほか頑張り、最難関を目指すクラスに通うことを勧められた。こうなると塾からのプレッシャーもかかってくる。

「御三家を受けてほしい」

 面談でもはっきりとそう言われるようになっていた。成績が良いことは誇らしいものの、5年生の2月から毎週のようにテストが続いた。成績によってはクラスが「落ちる」こともあるため、常に気が抜けなくなった。

 しかも、コロナ禍で学校見学に行くこともできない。本人も「受験したい」というものの、「ここに行きたい」という志望校を決めきれずにいた。

 そんな中、本人がやっと行きたいと思った学校の名前を出すと、担当講師は、

「そこは御三家クラスの勉強を普通にやっていれば受かるよ」

 といって、取り合わない。

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