1950年、マザー・テレサは困窮する人々を救済する「神の愛の宣教者会」を設立し、貧しい人や住む場所のない人、病気の人、身寄りのない人たちへの献身的な世話をした。その活動は全世界で報じられるようになり、ノーベル平和賞をはじめとする名誉ある賞を次々と受賞した。そんな活動の原点は、イエス・キリストからのお告げだった。清涼院流水氏の新著『どろどろの聖人伝』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、紹介する。
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現代人に聖人の聖性を示した伝説の聖女
のちに「マザー・テレサ(コルカタの聖テレサ)」の名で世界に知られるアグネス・ゴンジャ・ボヤジウは、1910年、オスマン帝国のスコピエ(現在の北マケドニア共和国の首都)で生まれました。イスラム教徒や東方正教会の信徒の多い土地でしたが、彼女の家は敬虔なカトリック信徒でした。カトリックの学校に通いながら、彼女は12歳の時には既に、「将来はインドで宣教したい」という夢を持っていました。
18歳の時にアイルランドのラスファーナムのロレト修道会に入ったアグネスは、尊敬するリジューのテレジアの名を取って修道女としては「テレサ」と名乗り、以後は「シスター・テレサ」と呼ばれるようになります。