泉房穂(いずみ・ふさほ)/1963年生まれ。前・兵庫県明石市長。弁護士、社会福祉士。著書に『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』など
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「失われた30年」から抜け出せない日本。その原因は「政治」にあるというのは、前明石市長・泉房穂氏だ。今の時代に必要なのは「子どもを守る政治」と訴える。AERA 2023年11月27日号より。

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──「失われた30年」をどう見ますか。

 歴史上、稀(まれ)に見るひどい30年でした。経済は成長せず給料も上がらないにもかかわらず、国民に鞭(むち)打つように税金と保険料だけは増え続け、未来に希望を持ちにくい社会になってしまいました。

──原因はどこにあったのでしょう。

 政治です。ただし、政治が何もしてこなかったからではありません。してきたけど、間違いを続けてきたのです。

──どういうことですか。

 日本の政治は、昔からほとんど変わっていません。例えば、人口も財源も右肩上がりだった時代の発想のまま、いまだ無駄な公共事業に湯水のごとくお金をつぎ込んでいます。しかも、日本は税金などの国民負担率は1960~70年代は20%台だったのが、今では47.5%と倍以上になりました。もう国民は十分すぎるほど負担しているのに、生活はちっとも良くなっていない。子育て支援も介護負担の軽減も、一向に進みません。今こそ政治が必要な時代なのに、この30年間、政治は機能しませんでした。

──政治が貧困になったのでしょうか。

 日本の政治は元々貧困なんです。日本に「政治家」はいません。いるのは私利私欲のため職業として政治に携わり、官僚に従う「政治屋」ばかり。今の政治主導は政治家のための政治主導であって、国民のための政治主導ではありません。政治家には国民への「愛」がありません。

子育てと教育の無償化

──特に日本は、子どもに冷たい社会です。

 これは私が大学生だった40年も前から言っていることです。「子どもを応援しない社会に未来はない」と、当時論文にも書きました。40年前は、子どもが泣いていても誰も気づかない時代でした。その後、子どもが泣いていることに気づいたけど、気づかないふりをする時代が続きます。そして、二十数年前に、さすがに子どもが泣いているから何とかしなければいけないと気づき、2000年に児童虐待防止法が成立しました。しかし、何をしていいかわからない時代が続いています。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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