私は今、2014年にルワンダとケニアを訪問した時のことを思い出している。当時から、現地のインフラ整備事業には中国企業が大挙して参入していた。現地の人々に中国は脅威ではないのかと聞くと、彼らの答えは判で押したように、「欧米諸国よりはマシだ」というものだった。中国の「債務の罠」についての答えも決まっていた。「あんたたちは、黒人を馬鹿にしているからそんなことを言うのかもしれないが、俺たちは馬鹿じゃない。ちゃんと計算してやっている。そもそも、中国とは商売として取引している。彼らは、我々に銃を向けて従わせようとはしない。自由意思によるウィンウィンだ。フランスやイギリスとは違う」のだと。彼らの植民地主義批判は激烈なものだった。
その話を思い出しながら気になるのが、中国もまた植民地主義への強烈な反感を持っていることだ。彼らもまた帝国主義列強によって搾取された。現在は、その屈辱からの復興途上だと考えている。米中首脳会談でも冒頭に習近平国家主席がバイデン大統領にはっきりとそのことを伝えている。グローバルサウスの諸国に対して、中国は反植民地主義を体験した仲間として共感を得ることができる立場にいる。上から目線ではない対等の関係、人権などの内政問題への不干渉、互恵主義のウィンウィンなど、掲げる原則もベースには反植民地主義があり、いかにも西側先進国への批判につながるものだ。中国は、これらの諸国との協力関係を拡大することによって、中国中心の新たな国際秩序を形成しようとするだろう。インド、トルコ、サウジアラビア、さらにはロシアなども同じような手法で自らの国際的影響力を拡大しようとしている。