「災害」として防衛省に陳情
危機感を強めた議連は、打開策を求めて今年1月、防衛省に浜田靖一防衛相(当時)を訪ね、陳情書を手渡した。
「野外活動の経験が豊富で、高度な技術を持つ自衛隊OBに、イノシシをわなに追い込む『勢子(せこ)』を担っていただければ、ありがたい」
さらに現役の自衛隊員にも組織的な支援をしてほしいと検討を求めた。
木下さんは、
「これはイノシシによる『被害』というより『災害』です。でなければ、国防が本来業務である防衛省に、こんなお願いはできません」
と話す。
千葉県富津市が地元の浜田防衛相は、「お気持ちはわかります」と返答したという。しかし、木下さんには十分な手応えは感じられなかった。
「十分にご理解いただけたと思います。ただ、今はそういう時期ではない、と考えられている印象を受けました」
さらに気になるのは、イノシシの行動が変化してきていることだ。
臆病な性格のため、見通しの良い幹線道路も渡れないと言われてきたイノシシが、最近では人家の多い場所に出没するようになった。兵庫県神戸市では、人から危害を受けることはないと学んだのか、住宅地のごみ集積場をあさるイノシシも現れたという。関東でも同様の事態になる可能性は、十分にある。
「敵は進化している」
木下さんは危惧する。
押しとどめる手立てもないまま、イノシシは街に迫っている。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)