「絶滅」したと思われていたイノシシがなぜ、復活したのか。
県による聞き取り調査やイノシシのDNAの分析結果によると、80年代中期以降、イノシシは県外から複数回にわたって持ち込まれ、県南の鴨川市などに放たれたと見られている。
そして、その後の対策も後手に回った。イノシシによる被害は県南の一部の自治体に限られていたこともあり、他の自治体に危機感は共有されず、足並みを揃えた対策がとられなかった。
県議会の自民、立憲、共産など超党派の議員からなる「有害鳥獣対策推進議員連盟」で幹事長を務める木下敬二さんは、
「ある首長さんは『うちに本籍のあるイノシシはいない。たまに越境してくるやつがいるだけだ』と言っていました。ところがその後、その自治体ではイノシシが尋常でない増え方をした。当時、手を打っていれば、なんとか対応できたかもしれませんが、今となってはどうしようもない」
と話す。
県は15年以降、毎年2~3万頭を捕獲しているが、拡大を抑えられていない。
イノシシは年に1回出産し、平均して4~5頭を産む。条件が良いときの繁殖率は1.63と推定されるが、計算上は1000頭のイノシシが翌年には1630頭、5年後には約1万1500頭、10年後には約13万頭に増えることになる。
それに対し、イノシシの捕獲を担う県内の狩猟免許所有者は、1978年度の2万656人をピークに減少し、2020年度は3分の1以下の6578人。そのうち60歳以上は62%を占める。
狩猟者の減少と高齢化のため、イノシシの捕獲が追いついていない状況なのだ。