新田恵利さん 写真/上田泰世(写真映像部)
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 元「おニャン子クラブ」でタレントの新田恵利さんは、母親の骨折を機に、ある日突然在宅介護が始まり、6年半後、自宅で母を看取りました。好評発売中の週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2024年版 在宅医療ガイド』で、終末期の在宅医療や自宅での看取りの様子、そのときの思いについて聞きました。

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 新田さんが母、ひで子さんの終末期を意識したのは、2020年8月、ひで子さんが91歳のときのこと。骨折での入院を機に衰弱し、何も食べられず、点滴を打てる血管もなくなり、医師から「終末」という言葉も出て、最期が近づいていることを覚悟します。そして共にひで子さんの介護をしてきた実兄と「最期は家で迎えよう」と思いをすり合わせ、退院を決めます。

新田恵利さん 写真/上田泰世(写真映像部)

「母は70代のときから日本尊厳死協会に入会していて、延命措置を希望しない、できれば最期は自宅で迎えたいという意思を表明していました。私が雑誌か何かで知って母に記事を見せたら『すぐに申し込みたいから資料を取り寄せて』と言ったんです。母は何でも先延ばしにするタイプで(笑)、あれほど前のめりに行動した姿は、最初で最後だったと思います。家族に迷惑をかけたくないという気持ちが強かったのかもしれません」

 新田さんはそんなひで子さんの思いを当時から受け止めていました。しかし実兄は違いました。

 ひで子さんの在宅介護が始まったのは、14年10月、85歳のとき。圧迫骨折で入院したことがきっかけとなり、立つことも歩くこともできなくなり、要介護4と判定されます。新田さんの自宅は1階にひで子さん、2階に新田さん夫婦が住む二世帯住宅。在宅介護をきっかけに、新田さんの実兄も同居することになり、兄妹でオムツ替えや着替え、食事の準備など、ひで子さんを介護する生活が始まりました。

 在宅介護が始まって2カ月ほど経ったころ、ひで子さんが体調を崩し、兄妹の思いはぶつかります。
 

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兄は母を入院させると言う